損をせずに離婚調停を自分で申し立てる時の注意点【弁護士なし】

弁護士 おがわ

こんにちは。武蔵小杉、たまプラーザ、二子玉川からほど近い溝の口テラス法律事務所の代表弁護士、小川です。

よく、「離婚調停は自分で申し立てられますか?」というご質問をいただきます。

「弁護士費用をかけたくないので自分でやりたい」「プライベートな内容を人に話すことに抵抗がある」とお考えの方もいらっしゃると思います。

結論としては「自分で申し立てられます」が、事前に押さえるべき点がたくさんあり、決して簡単とは言えません。

この記事では、離婚調停をご自身で申立てる場合の注意点や、費用について、損をしないために弁護士へ依頼した方が良い場合について弁護士小川豊が解説いたします。

目次

離婚調停を自分で申し立てることができるか

離婚調停を弁護士に依頼せず、自分で申し立てることはできます。

まずは離婚調停がどういうものかについて、しっかり押さえておきましょう。

離婚調停とは

そもそも離婚調停とはどんな手続きなのでしょうか?

離婚調停とは、裁判所で調停委員の仲裁のもと離婚についての話し合いをする手続きです。

話し合いと言っても、夫婦が順番に調停室に呼び出され、2名の調停委員を介して行われますので、相手と直接話すことはありません。

調停では、有識者である調停委員が夫婦の主張を聞きつつ、すり合わせを繰り返して、合意を目指すことになります。

そのような手続きなので離婚調停は後述する問題点はありますが、ご自身で行うこと自体はできるのです。

離婚調停を自分でする場合のメリット

次に離婚調停を自分でする場合のメリットですが、最大のメリットは「弁護士費用がかからない」ことと言えます。

離婚調停を弁護士に依頼すると数十万円以上の弁護士費用がかかりますので、ご自身のみで離婚調停を申立てられればこの費用を節約できます。

その他のメリットとしては「夫婦の事情を調停委員以外に話さなくて良い」ことがあげられますが、ご自身で離婚調停をする場合でも、調停委員には事細かに夫婦の事情を話す必要があります。

離婚調停を自分でする場合のデメリット・問題点・損をする可能性

離婚調停を自分でするメリットは「弁護士費用がかからない」ことですが、弁護士に依頼しない場合のデメリット・問題点もあります。

メリット・デメリットをしっかり把握して、離婚調停に臨みましょう。

自身に得になる主張ができず大きな損をしてしまう危険がある

調停は、一見するとざっくばらんに話せる場のようにも思えます。

しかし、実際には、法律を前提にした交渉の場と考えるべきで、相手がこちらの意見に反対する場合には、相手や調停委員会を説得できる法律上の根拠を示すことが必要になります。

また、たとえば「まだ貰ってもいない退職金が財産分与の対象になる」など、一般常識と一見異なる運用もとても多いので、そもそも自分に得になる運用を知らないとその主張すらできず損をしたことにも気づかないで調停が終わってしまう危険性すらあります

(調停委員会は公平な機関である以上、こちらのミスや見落としにアドバイスをしてくれるとは限らないのです。)

ご自身で調停に挑まれる場合、上記のような運用があることや法的根拠なども含めて、十分に勉強と準備をすることが必要になってきます。

相手の主張や調停委員会の意見の正否が判断できない

離婚調停では、もちろん相手も自分に有利な主張をします。

そのなかには、法的にみて成り立たないものや、正当なもの、法律家でも意見が分かれるものなど様々な主張が混在していることが普通です。

法的に成り立たず、ご自身が納得できないものを受け入れるべきではありません。

一方で、法的にもっともである相手の主張をいつまでも受け入れなければ、調停委員会からは「合理的な話し合いができない当事者である」と誤解をされてしまうかもしれません。

しかし、どの主張が法的にもっともなのかを法律家以外の方が判断するのは、かなり難しいと言えます。

たとえば、「子供名義の貯金」は、子供さんか、これから子供さんを育てる親御さんが取得するのが常識に適うようにも一見思いますが、法律上はそうならないこともあるのです。

また、調停委員会が、ある争点について意見を述べることがあります。

しかし、この意見も絶対に正しいわけではありません。

現実に、調停委員会が示した意見と異なる判例や文献を提出しこの意見を変更させたことはありますし、調停委員会が意見を変えなくても審判の後、高等裁判所に変更を求めて変更が認められることも勿論あるのです。

離婚調停では、相手の主張はもちろん、調停委員会の意見の正否も判断する必要があります。

この判断をご自身のみで適切に行うことは難しい場合が多いのです。

調停の準備・出頭に大変な思いをする

ご自身の主張や相手への反論も、口頭だけでは調停委員会を納得させられません。

調停委員がこちらの主張を理解できるように自分の主張を法律にしたがって整理した書面や証拠を準備して提出しなければならないのです。

また調停は1か月~1か月半に1回程度、平日に家庭裁判所で行われますが、ご自身だけで挑まれる場合は、この調停に必ず出席しなければならず社会人の方にとってはなかなか大変です。

弁護士に頼めば、調停の準備・出頭は弁護士が主体になって行いますので、準備に大変な思いをすることもなく、調停委員の説得に足るレベルの高い主張書面や証拠を提出することができます。

また突然調停に行けなくなっても弁護士に任せることができるのです。

【損をしたくない】離婚調停を弁護士に依頼することをおすすめしたい場合

これまでのお話しのとおり、離婚調停は法律を用いた交渉の場と捉えるべきですので、弁護士に依頼しない場合、大きく不利になってしまう危険があります。

一方で弁護士費用は多額ですから弁護士に依頼するか悩まれる方もいらっしゃいますよね。

そこで、特に弁護士に依頼することをおすすめしたい場合お伝えしていきます。

離婚や親権に争いがある場合

離婚をするかどうかについて争いがある場合、最後のところでは、「離婚原因があるか」という法律的な議論をしなければなりません。

また親権に争いがある場合も、こちらが親権者にふさわしいということを法律の考え方に従って主張しなければなりません。

ここでも常識とは少し異なるようにも思える考え方が必要な場合があります。

たとえば、「不貞をした=離婚原因がある」となることが多い一方で、「不貞をした=親権者として不適格」と必ずしもなるわけではないのです。

このような場合、「不貞の結果、子供の監護養育をしなかった」などの事情を示してはじめて相手の親権者としての不適格性を法的に主張したことになるなど、常識と少し異なるように思える考え方が法律にはあります。

難解な法律の考え方を十分に理解したうえで、自身の主張を根拠付ける証拠を選別して提出し、目まぐるしく変わる調停の進行に対応していくことは、弁護士でも特に離婚事件の経験豊富な弁護士でなければ難しいでしょう。

そこで、離婚をするかどうかや親権をどちらにするかなどの重要な事柄に争いがあるときは、離婚事件が得意な弁護士をつけて有利に戦っていくことが望ましいといえます。

財産額や収入が多額である場合

財産額や収入が多額である場合、わずかな判断のミスひとつで弁護士費用以上の損をしてしまうことは珍しくありません。

たとえば、持ち家にご自身のご両親が頭金を出してくれたという場合、その分はご自身の「特有財産」となり、ご自身のみが取得できることになります。

さらに、不動産の価値が購入時に比べて増減している場合、この「特有財産」の計算方法次第でご自身の取り分に数百万円の差が生じてしまうこともあるのです。

ご夫婦の財産が多いと、上記以外にも多数ある検討事項の見落としや、わずかな判断ミスひとつで数百万円の損をしてしまう争点が多数生じてしまいかねず、弁護士費用を節約したつもりが、かえって大きく損をしてしまうことがあり得るのです。

離婚後のトラブル防止・対応をしたい場合

離婚調停が終わって、晴れて離婚となってもトラブルが起こることは少なくありません。

離婚事件の経験豊富な弁護士であれば、できる限りトラブルが起きないよう先を読んで、トラブルを防止する取り決めを行うことができますし、万が一、取り決めが実行されない場合の対応もできます。

またお子さまの養育にかかる費用が変わった、再婚をしたなどの事情の変更があった場合、離婚調停で取り決めた内容の変更を請求しなければならないこともありますが、事情を知っている弁護士に相談すればすぐに増減額ができる場合か判断でき、スムーズに対応できるでしょう。

ご自身の離婚調停に弁護士を付けるべきかも含め、ご相談を承っています

離婚調停は人生を変える交渉の場です。
弁護士に依頼しない場合、必ず十分な勉強と準備をして調停に臨みましょう。

また、弁護士費用を節約できることは大きなメリットですが、収入や財産額が多額である場合、弁護士に依頼すれば得られたはずの財産が得られず、かえって弁護士に頼んだ場合に比べて大きくマイナスになってしまうことも多いです。

なにより、離婚できるか否かや親権をどちらにするかの問題は、お金には代えられません。


  • これって弁護士に頼んだほうがいいのかな?
  • 相談していいレベルなのかどうかわからない
  • どうしたらいいかアドバイスがほしい

このようにお悩みの方も、まずは溝の口テラス法律事務所へお気軽にお問い合わせください。

溝の口以外の、たまプラーザ、武蔵小杉、二子玉川にお住まいの方のご相談実績も豊富です。

※本記事は執筆時点の法律・実務運用等に基づいて作成しております。

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