こんにちは。武蔵小杉、たまプラーザ、二子玉川からほど近い溝の口テラス法律事務所の代表弁護士、小川です。
今日は、いくつかある遺言の方式について解説をしていきたいと思います。
遺言は、あなたの大切な想いや財産を、あなたの大切な人に遺すための重要な手段です。
また遺言がないために、仲の良かった親族間で遺産をめぐる争いが起こってしまうことは実際に多くあるのです。
一方で、遺言書にはいくつかの種類があり、それぞれに特徴があります。この記事では、遺言書の主な種類とその選び方について詳しく解説します。
遺言書の主な種類とその概要
遺言書には主として、以下の3つの種類があります。
㋐自筆証書遺言
㋑公正証書遺言
㋒秘密証書遺言
ただ、多くの方は㋐自筆証書遺言か㋑公正証書遺言を利用され、㋒秘密証書遺言が利用されることはそれほど多くありません。
また、これら㋐から㋒の遺言以外に、死亡危急時や船舶遭難時、伝染病隔離時などの特別な場合の遺言がありますが、これらは非常に限定された場合の遺言ですので本記事では説明を割愛いたします。
そこで以下では、㋐自筆証書遺言と㋑公正証書遺言を中心に解説していきます。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言者が自分で書き残す遺言書です。
自筆証書遺言は、手軽に作成できる点が魅力で、費用がかからず、誰でもすぐに作ることができるため、多くの人に利用されています。
近年、民法改正があり、平成31年1月から自筆証書遺言に関する制限が一部緩和されました。
遺言の全文を自筆で書く必要がなくなったのです。
ただし、これらの財産目録には条件があります。遺言者は毎葉(手書きでない部分が両面にあるときは、その両面)に署名し、押印しなければなりません。
この改正により、多数の財産を持つ方でも自筆証書遺言がより使いやすくなりました。
遺言作成の手続きが簡略化され、より多くの人が利用しやすくなったといえるでしょう。
また、自筆証書遺言は紛失や偽造のリスクも考慮する必要がある点や、相続開始後は家庭裁判所で検認という手続きをする必要があり相続人の手間が発生する点が使いづらい点でした。
しかし民法改正により、自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる自筆証書遺言保管制度ができ、紛失などのリスクが減少し、また、この制度を利用する場合、上記の検認手続きも必要ないことから、これらの問題点も解消できるようになりました。
一方で、自筆証書遺言保管制度は、遺言の内容について相談できる制度ではないことや、保管された遺言書の有効性を保証する制度ではないことは注意が必要です。
公正証書遺言
公正証書遺言は、公証役場で公証人の関与のもと作成する遺言書です。
また、偽造や隠匿のリスクもなく、安心して利用できます。
さらに、相続開始後の検認が不要なため、遺言執行がスムーズに進む点も魅力です。
秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言の内容を秘密にしておくことができる遺言書です。遺言者が遺言の内容を記述し、それを封印して公証人と証人の前で確認します。 具体的には、下記のような手順で作成します。
公証人にすら遺言の内容を秘密にできるため、遺言の内容を他人に知られたくない場合に適しています。
また秘密証書遺言は、自筆証書遺言と異なり、自筆の署名があれば遺言の内容は自書する必要はありませんので、パソコンなどで作成できます。
また、秘密証書遺言は、遺言者自身が保管するので、第三者による破棄の危険があるのです。
さらに検認も必要になります。 そこで公証人にすら秘密にしたい内容がないのであれば、秘密証書遺言を使う意味は大きくないかもしれません。
ドラマでは秘密証書遺言のような体裁の遺言書が出てくることはありそうですが、現実に使う人はそう多くなさそうですね。
そこで以下では、自筆証書遺言と公正証書遺言どちらを作るべきかを検討していきます。
自筆証書遺言と公正証書遺言どちらを作るべきか
結論的には、下記のとおり公正証書遺言を作ることをお勧めします。
まず自筆証書遺言と公正証書遺言の違いを整理しましょう。
自筆証書遺言と公正証書遺言の違いのまとめ
自筆証書遺言と公正証書遺言の違いを以下の5項目で解説します。
- 作成方法
- 承認の要否
- 保管の方法
- 検認手続きの要否
- 費用
自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | |
---|---|---|
① 作成方法 | 自分で作成 | 公証人が作成 |
② 証人 | 不要 | 必要 |
③ 保管の方法 | 自分(自筆証書遺言保管制度を利用する場合は法務局) | 公証役場 |
④ 家庭裁判所の検認 | 必要(自筆証書遺言保管制度を利用する場合は不要) | 不要 |
⑤ 費用 | 不要(自筆証書遺言保管制度を利用する場合は数千円の手数料が発生) | 必要 |
①作成方法の違い
まず、①自筆証書遺言は自分で作成するのに対し、公正証書遺言は公証人が作成します。
自筆証書遺言は形式的な要件が厳しく、たとえば「令和6年8月吉日」と書いたなどの、一見何でもないようにも思える記載で無効になってしまうことも多く、民法や判例を十分に勉強しておかないと、せっかく書いた遺言が無効になってしまうリスクが小さくないのです。
しかし公正証書遺言は公証人という法律の専門家が作成するため、形式的な間違いで遺言が無効になってしまうリスクは非常に小さいといえます(但し、自筆証書遺言であっても、自筆証書遺言保管制度を利用する場合は形式的な間違いで遺言が無効になってしまうリスクは小さいでしょう。)。
②証人の要否の違い
また、②公正証書遺言は、自筆証書遺言と異なり、証人が必要になります。
一見面倒にも見えますが、後日、遺言に不満を持つ相続人から「遺言者は遺言作成当時、遺言能力がなかったから無効である」等と難癖をつけられ場合、公証人が遺言能力を確認し、証人が関与していたことで信頼性が高まるので、自筆証書遺言よりも無効とされることは少なくなるのです。
③保管の方法と④検認手続きの要否の違い
さらに公正証書遺言は、③交渉役場が保管してくれて、④相続開始時の家庭裁判所の検認手続きも不要ですので、紛失や改ざんのリスクも少なく、相続開始後スムーズに遺言執行を進めていけるのです(但し、自筆証書遺言でも、自筆証書遺言保管制度を利用する場合は③法務局が保管してくれて、④検認手続きも不要になるので大きな違いはないでしょう。)。
⑤費用の違い
公正証書遺言のデメリットは、
- 公証役場の手数料がかかること
- 公証役場に出向かなければならないため自筆証書遺言ほど手軽には作成できない
この2点です。
しかし、せっかく書いた遺言が無効になってしまい長きにわたって相続争いがはじまってしまう危険を考えれば、あなたの大切な想いを相続人の方に伝えていくことにお金をかけていいところと思います。
弁護士に遺言書の作成を頼もう
自筆証書遺言を作るのか公正証書遺言を作るのかを決めた場合でも、弁護士に一度は相談に行くと良いでしょう。
適切な遺言書の内容を提案できる
相続事件に注力している弁護士であれば、あなたの希望を詳細に聞き取って適切な内容の遺言を提案してくれます。
特に遺言は、複雑な相続法と多数の難解な判例を十分に理解して作らなければいけませんので僅かなミスが意図しない結果を招いてしまいかねません。
そこで相続に注力している弁護士に相談して、作るべき遺言の大枠を知りましょう。
修正、変更、他士業の紹介など充実したサポートをしてくれる
上述のとおり遺言はとても複雑で難しい法律や判例を下地にしているので、一見単純な条文に見えても難解な検討を経て作られます。そこで何度チェックしても十分すぎることはありません。
自筆証書遺言はもちろん、公正証書遺言であっても、預貯金の口座番号の誤記という単純な間違いから、時間の経過と状況の変化が相まって制度の落とし穴にはまりデッドロックの状態を作り、かえって相続人の争いを激化させてしまった遺言も見たこともあり、不備のない遺言を作ることは大変に難しいのです。
また、遺言を作成したものの事情が変わり、内容を変更したいという時も、変更した事情を精密に検討したうえで当初の希望をも考えながら、矛盾しない内容にしなければいけません。
さらに作った遺言が登記や税など他士業の専門分野の検討が必要になることもあるのです。
相続事件に注力している弁護士であれば、遺言の難しさをよく知り、他士業と連携を取りながら修正や変更、税や登記の専門分野への対応をしていくことができるのです。
もちろん公正証書遺言を作る場合の、公証役場との面倒なやり取りも弁護士に任せることができますよ。
相続開始後も対応できる
遺言があっても他の相続人の関与が必要な手続きについて、多額の「ハンコ代」を要求されるなどして遅々として手続きが進まないこともあります。
しかし、遺言書作成を依頼した弁護士を遺言執行者として指定しておくことで、そのような相続人対策にもなる遺言を作成できます。
また、遺言を作った弁護士は遺言の内容や当時の状況に加え、遺言執行手続きを熟知しているので、他の相続人の不当な要求にも毅然とした態度で臨みスムーズに遺言執行ができるのです。
遺言書のお悩みは、いつでも溝の口テラス法律事務所にご相談ください
溝の口テラス法律事務所の代表弁護士小川は、紛争予防の専門家である司法書士の経歴があり、弁護士になった後も都内の相続事件に注力する弁護士法人で修業をし、溝の口テラス法律事務所を開業してからも多数の遺言作成に携わってまいりました。
相続に強い税理士と連携しながら、広く深い知識と確かな実績でご相談者様のご希望を実現できる遺言の作成をサポートいたします。
遺言作成で少しでも迷われたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
- これって弁護士に頼んだほうがいいのかな?
- 相談していいレベルなのかどうかわからない
- どうしたらいいかアドバイスがほしい
このようにお悩みの方も、まずは溝の口テラス法律事務所へお気軽にお問い合わせください。
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※ 本記事は執筆時点の法律・実務運用等に基づいて作成しています。