離婚調停が「意味ない」は大間違い!知らないと損する離婚訴訟との違い

弁護士 おがわ

こんにちは。武蔵小杉、たまプラーザ、二子玉川からほど近い溝の口テラス法律事務所の代表弁護士、小川です。

時々ご質問をお受けするのが「離婚調停は自分でやってみて、訴訟になったら弁護士に頼む」という方法の良否です。

結論から申し上げますと残念ながら多くの場合、決して良い手ではなく、悪手と言ってしまっても良いと思います。

むしろ離婚事件の主戦場は離婚調停とも言える大事な局面です。

今回は離婚調停と離婚訴訟の違いを比較しながら、なぜ離婚調停の段階から弁護士に依頼することが大切なのかをご説明します。

目次

離婚調停は意味がない?離婚訴訟の違い

多くの離婚事件に関わってきた弁護士の視点で離婚調停と離婚訴訟の違いをお示しするなら、離婚調停は、離婚訴訟に比べると

  1. 創意工夫により結果が大きく変わる
  2. 離婚訴訟ほどミスが大きく響きにくい

という違いがあると考えています。

この①②の違いから、早期のより有利な解決のためには、離婚調停の段階から弁護士に依頼することがポイントであると言えます。

なぜこのように言えるのかを離婚調停と離婚訴訟の違いを解説しながら説明をしていきますね。

  • 申立ての順番
  • 審理の主体と流れ
  • 対立の深刻度
  • かかる期間
  • 実質的な違い

離婚調停と離婚訴訟の違いは大きく分けて上記5つが挙げられます。

ではひとつひとつ見ていきましょう。

申立ての順番

離婚訴訟は、調停前置主義といって、先に離婚調停を申し立てなければ、提起することができないことが原則です。

同じく調停前置主義がとられている遺留分事件などでは、話し合いが功を奏しなかったことをきちんと説明すると調停を経ず訴訟を提起してもそのまま受理してもらえることが多いと感じる一方、離婚訴訟では、そのようなことは経験になくこの調停前置主義が相当重視されている印象を受けます。

それほどまでに裁判所は離婚事件について、調停での解決に重きを置いているとも考えられそうです。

審理の方法

離婚調停と離婚訴訟では、審理の主体と流れが以下のように違ってきます。

離婚調停離婚訴訟
審理の主体裁判官1名・調停委員2名裁判官
審理の流れ調停委員との話し合い主に書面での主張反論

審理の主体

調停は裁判官1名と男女の調停委員2名で構成される調停委員会が審理の主体(裁判を進める人)となるのに対し、訴訟は裁判官が審理の主体になります。

調停委員は、法律の専門家ではない民間の有識者から選ばれることが多いです。

そこで、離婚事件に注力している弁護士であれば、調停委員が法律の専門家でないことを念頭において、専門家でなくても読みやすいように平易な文章や分かりやすい説明を添えた書類を作成するなど、調停委員にこちらの主張を理解してもらえるよう十分に準備をして主張をしていくことが普通です。

審理の流れ

離婚訴訟では、裁判官が争いになっている点(争点)を整理し、当事者が淡々と主張反論を繰り返して審理を進めていきます。

主張反論は主に書面でされ、残りますので、法的に間違いのない主張をすることが必要ですし、相手の主張に対しても法的に間違いのない対応をしなければいけません。

これに対して離婚調停では、男女の調停委員が、交互に夫婦と話し合いをし、条件を調整して合意を目指します。

離婚調停でも書面は提出しますが、離婚訴訟と違い、1回の調停期日について合計2時間もされる長時間の話し合いが離婚調停の方向性を決めますので、この話し合いを前提にした書面を作っていくこともあります。

訴訟は法律に従って進行しますが、調停は法律の考え方が前提にはなっていても絶対にそれに従わなければいけないわけではありません。そこで、調停では法的に難しい主張であっても、常識に適っていればその合理性や解決の妥当性を強調して主張することも良くあります。

その結果、離婚訴訟で判決になれば到底できないような解決が、離婚調停ではできることもあるのです。

対立の深刻度

離婚訴訟は、調停で合意できなかったご夫婦がやむを得ず提起するものですので、対立の深刻度はもちろん訴訟の方が大きくなっていることが普通です。

このような離婚訴訟でも激しく争い当事者尋問を経て判決に至った場合、その後、お互いが協力関係に立つことは必ずしも簡単ではないでしょう。

弁護士 おがわ

調停で終わらせることには、これからも子供さんを通じていくらかは関わらざるを得ない相手方との紛争を過度に激化させないという意味もあるんですね。

かかる期間

離婚調停にかかる期間は半年程度が平均と言われますが、稀に1、2回で終わることもあれば、1年以上かかることもあります。

お互いが合意できれば終わりですので、期間は千差万別でしょう。
訴訟は、裁判官がある程度計画立てて進行しますが1年半が平均的な期間と言われています。

そうすると、相対的に短い期間で終わることが多い離婚調停で合意の道を探すのは一考の価値がありそうです。

離婚調停と離婚訴訟の実質的な違い

以上を踏まえて、離婚調停と離婚訴訟の実質的な違いを考えると、最初に挙げた通り

  1. 創意工夫により結果が大きく変わる
  2. 離婚訴訟ほどミスが大きく響きにくい

という点が挙げられると考えます。

創意工夫により結果が大きく変わるという観点ですが、離婚訴訟は、裁判官が法律に従った判決を書くことができるように審理が進められます。

一方で離婚調停は、法律の考え方が念頭にあるものの、お互いの交渉の中で落とし所を見つける手続きですので工夫の余地が大きく、離婚訴訟ほどはご夫婦の対立が深刻化していないことも相まって、結果を法律の考え方から大きく変えることができる場合があります。

また、②離婚訴訟ほどミスが大きく響きにくいという観点では、離婚調停では書面に書いたことや一度した応答が離婚訴訟ほどは重視されませんし合意をしなければ成立しませんので、見逃しやミスが離婚訴訟に比べれば手痛い失敗になりにくいのです。

つまり、離婚調停は、失敗を恐れず創意工夫をして結果を大きく変えられる可能性がある場なのですから、離婚訴訟まで見据えるなら、なおのこと離婚調停から弁護士に依頼しない手はないと私は思います。

ご自身だけで離婚調停をたたかう場合

それでもご予算の問題やご自身で解決したい気持ちがあり、離婚調停では弁護士に頼めないという方もいるでしょう。

その場合は、とりあえず話してみるなどの心持ちでなく、それこそ「離婚調停が離婚事件の本体で、離婚訴訟はロスタイム」くらいに思っても良いと思います。

離婚調停で解決できるかが早期の有利な解決ができるかの分かれ道になることを確認し、徹底的に準備をされ離婚調停で決めるつもりで挑まれることが大事です。

まとめ

離婚調停を、第二ラウンドの離婚訴訟があると思って挑んでは早期の有利な解決ができる機会を逃してしまいかねません。

実際に、私が受け持っている離婚事件も8割程度は調停で解決しており、離婚事件の主戦場はあくまで離婚調停なのです。

弁護士 おがわ

弁護士への依頼を悩まれている方が本記事をご参考にしていただき、良い解決ができることを願っています。

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