
こんにちは。武蔵小杉、たまプラーザ、二子玉川からほど近い溝の口テラス法律事務所の代表弁護士、小川です。
「モラハラ夫とやっとの思いで別居したのにあ、今度は『監護者指定・子の引渡し審判』を申し立てられてしまった…」
「私が子どもを育ててきた実績は考慮されるの?裁判所は何を基準に判断するの?」
当事務所にも、このような切実なご相談が日々寄せられます。
そこで今回は、ご相談者さまから頂いた以下のご質問をもとに、
- 「監護者指定・子の引渡し審判」の基本的な内容
- 裁判所が判断する上で重要となる「4つの基準」
- モラハラ夫との争いで有利に進めるための考え方
について、詳しく解説していきます。
- モラハラ夫と別居しました。すると直ぐにモラハラ夫が「監護者指定・子の引渡しの審判」というのをしてきました。
「監護者指定・子の引き渡しの審判」とは一体何ですか? - 私は勝てますか。子供は、兄妹で、7歳の息子と5歳の娘です。私は、子供が生まれてからずっと専業主婦で子育ても私だけがしていました。モラハラ夫はフルタイムで仕事をし、毎晩飲みに行っては深夜に帰ってきて子育てには一切協力してくれないどころか、イライラすると私や子供に怒鳴る等の八つ当たりをしていました。
子供は二人ともモラハラ夫が怖いからお母さんと一緒にいたいと言っています。また、私は実家に帰っていますが、私の両親も子供達をかわいがってくれて、父はまだ働いていますが、母は専業主婦ですので子供達の面倒をみてもらえています。兄妹は仲も良くいつもお出かけに行くときはお兄ちゃんが妹の手をつないで守ってあげています。 - この審判では、父母のどちらが子の監護者にふさわしいかを判断する基準が4つあると聞きました。その基準について教えてください。
突然の申し立て…「監護者指定・子の引渡し審判」とは具体的にどんな手続き?


監護者指定・子の引渡しの審判とは、子供の監護者であることの指定と、その指定を前提に子供の引き渡しを命ずる家庭裁判所の審判手続をいいます。



ご質問者さまのように子供を連れて別居した場合に、相手方が、「自分こそが別居中に子供を監護するべき親だから、引き渡すべきだ」と言って、この審判を申し立ててくることが多くあるのです。
監護者はどう決まる?裁判所が重視する「4つの判断基準(原則)」
監護者を判断する際には、下記の4つの基準を主軸にしながら検討がされます。
- 継続性の原則
- 子の意思の尊重
- 兄弟姉妹不分離の原則
- 主たる監護者の原則
それぞれ解説してまいります。
①これまでの安定した生活を守る「継続性の原則」
継続性の原則とは、子供の安定した生活環境や監護者との心理的な結びつきを尊重し、現状を維持することを重視する基準です。
いま現在安定しているのであれば、子供の生活環境を変えることは子供にとってプラスになりません。
そこで、特別な事情がなければ現状を変更しないことが一つの大事なメルクマールになるのです。
ただし、監護環境が不適切であるなど子どもの利益に反する場合や連れ去り等の違法な監護開始があった場合には、この原則が適用されないことがあります。
②子供の気持ちを大切にする「子の意思の尊重」
子の意思の尊重とは、家庭裁判所が子の年齢や発達段階に応じて、子の意思を考慮する原則を指します。
特に満15歳以上の子の場合、家庭裁判所は子の陳述を聴取する義務があります。
また、お子さんの希望が、その子の健全な成長や幸福(これを法律用語で『子の福祉』といいます)を明らかに損なうと考えられる場合にも、希望通りにならないことがあります。
例えば、正当な理由もなく『学校に行かなくても良い』などと教える親との同居を、まだ幼いお子さんが望んでいるようなケースがこれにあたります。
このような状況では、裁判所はお子さんの意思に反してでも、『子の福祉』を最優先し、もう一方の親を監護者に指定する可能性があるのです。
③きょうだいが離れ離れにならない「兄弟姉妹不分離の原則」


兄弟姉妹不分離の原則とは、子の利益を最優先に考え、兄弟姉妹を可能な限り一緒に育てることを原則とする考え方です。



別居により片方の親と別れて暮らすことになったうえ、兄弟姉妹も離ればなれにすることは、子供にとっては家族の崩壊を意味しかねません…。
そこで、裁判所は兄弟姉妹を分離しない方針を取る場合が多いです。 ただし、もちろん兄弟姉妹と言っても様々ですから、子供達の年齢や関係性、これまでの養育環境など、具体的な事情を総合的に判断して決定されます。
④主に世話をしてきた実績をみる「主たる監護者の原則」
主たる監護者の原則とは、子の出生時からの監護実績や継続性を重視し、子の情緒的成長や環境適応を考慮して監護者を決定するものです。



かつては母性優先の原則と呼ばれていましたが、近年では性別に基づく単純な母親優先原則ではなく、「子の利益」に基づき個別具体的に判断されるようになっています。
【相談事例】モラハラ夫との別居、私が監護者になれる?勝てる可能性をチェック


お聞きしたご事情のみから判断すれば勝てる可能性は十分あります。
というのも、ご相談者さまは、子供さんが生まれてからずっと専業主婦としてたった一人で子育てをしているので前述した④『主たる監護者』と言えそうです。
また夫のモラハラを原因とするやむを得ない別居後も、継続して子供さんを監護しており、さらに、ご実家という安定した生活環境で、ご相談者さまのご両親も子供さん達をかわいがってくれているというのですから、①『継続性の原則』の観点からも問題はなさそうです。
加えて、まだ幼いとはいえ子供さん達も、「お母さんと一緒にいたい」と言っていることや、仲の良い兄妹を離ればなれすべきでないことを考えると②『子の意思の尊重の原則』や③『兄弟姉妹不分離の原則』からも兄妹一緒にご相談者さまが監護すべきと言えそうでしょう。
まとめ:監護者指定で不利にならないために早期の弁護士相談が重要


今回は、子の親権・監護権に関するご質問についてご回答しました。
子の親権・監護権の争いとなったときのために、子の利益の4つの基準を押さえておくことによって、有利にたたかっていくことができます。
とはいえ、様々な事情によって、裁判所の判断は変わってしまいかねません。
そして、監護者指定・子の引き渡しの審判は、負けてしまうと、そのまま、離婚後も子供さんと一緒に生活できなくなってしまう危険性がある非常に重要な手続きです。
子の監護権について争いになった場合は、離婚事件に詳しい弁護士に相談しましょう。
- これって弁護士に頼んだほうがいいのかな?
- 相談していいレベルなのかどうかわからない
- どうしたらいいかアドバイスがほしい
このようにお悩みの方も、まずは溝の口テラス法律事務所へお気軽にお問い合わせください。
溝の口以外の、たまプラーザ、武蔵小杉、二子玉川にお住まいの方のご相談実績も豊富です。