弁護士 おがわこんにちは。武蔵小杉、たまプラーザ、二子玉川からほど近い溝の口テラス法律事務所の代表弁護士、小川です。
長年悩んだ末に、ようやく家を出ることができた。
新しい部屋を借りて、新しい家具や電化製品も届いた。大切な荷物もこっそり運んだ。
「これでやっと離婚に向けて進める」
そう思って夫に離婚を切り出したのに
「絶対に離婚しない」
そう言われてしまった。
熟年離婚のご相談では、このようなことがあります。
夫婦としての実態などとっくになくなっている。それなのに、なぜ離婚を拒否するのか。
今回は、熟年離婚を決意してせっかく別居したのに、相手から離婚を拒否されてしまった場合に、どのような方法があるのかを考えてみたいと思います。


熟年離婚で別居しても、夫が離婚に応じるとは限らない


熟年離婚では、離婚を決意するまでに十数年、場合によっては何十年とかかっていることがあります。
特に長年モラハラなどに悩まされてきた方の場合、
「子供が成人するまでは」
「夫の定年までは」
「経済的に何とか生活できるようになるまでは」
と我慢を重ね、ようやく別居に踏み切ったという方も少なくありません。
ところが、いざ離婚の話になると、
「離婚するつもりはない」
「俺は何も悪いことをしていない」
「勝手に出ていったのはそっちだ」
などと言われてしまうことがあります。



離婚するかどうかは相手の人生にも関わる問題ですから、もちろん相手にも相手なりの考えがあるのでしょう。
しかし、相手が離婚に同意しないからといって、離婚を諦める必要はありません。
いくつか離婚の方法を考えてみましょう。
夫に「離婚しない」と言われたときの3つの対処法
相手が離婚を拒否している場合に考えられる方法は、大きく分けて次の3つです。
- 離婚訴訟まで見据えて、正面から離婚を求める
- 婚姻費用を受け取りながら別居を続け、時間の経過を待つ
- 財産分与などの条件で譲歩して、早期の離婚を目指す
どれか一つが正解というわけではありません。離婚原因や証拠がどれだけそろっているか、今のご夫婦それぞれの収入、どれくらい早く新しい生活を始めたいかによって、向いている方法は変わってきます。
それぞれの方法について、順番に見ていきましょう。
対処法① 離婚訴訟まで見据えて戦う|離婚事由と証拠を整理する


まず考えられるのは、正面から離婚を求めていく方法です。
ただし、訴訟になっても相手が離婚を拒否する場合、「離婚事由」という裁判所が離婚を認めるための法律上の理由がないと離婚ができません。
「相手の不貞行為」や「悪意の遺棄」、「3年以上の生死不明」などがあるか、あるいは、様々な事情から「婚姻を継続し難い重大な事由」があるといえるのか。(民法770条1項)
こうした点が問題になります。
モラハラや家庭内別居だけでは離婚が認められにくい理由
ここで熟年離婚の難しいところがあります。
長年モラハラを受けてきたという場合でも、一つ一つの言動だけを取り出すと離婚原因として評価することが難しかったり、家庭内で起きた出来事であるため証拠が十分に残っていないことが多いのです。
「もう何年間も家庭内別居でした」という場合も同様です。
家庭内別居は、同じ家に住んでいる以上、いつから夫婦関係が実質的に破綻していたのかを客観的に明らかにすることが難しい場合があります。



つまり、「私たち夫婦はとっくに終わっていた」というご本人の実感があっても、裁判で「婚姻関係が破綻していた」と認定されないことがあるのです。
そこで、現時点で離婚原因が十分なのか、どのような証拠があるのかを一度整理してみる必要があります。


対処法② 婚姻費用をもらいながら別居を続け、時間を味方につける


二つ目は、すぐに離婚できないのであれば、婚姻費用をきちんと請求しながら別居を続ける方法です。
夫婦には、離婚が成立するまで、原則としてお互いの生活を支える義務があります。
そのため、夫の収入の方が多い場合には、別居後も妻が夫から婚姻費用を受け取れることがあります。
別居生活を続けながら婚姻費用を受け取り、時間の経過を待つことができます。
熟年離婚では、自分が婚姻費用を払う側になることも
ただし、ここは熟年離婚ならではの注意点があります。
双方の収入や、監護しているお子さんの人数・年齢などを基礎として決められます。
そのため、たとえば長年旦那さんの方が高収入だったとしても、別居する頃には既に定年退職していたり、再雇用によって収入が大きく下がっている一方で、奥様は働き続けていて一定の収入を得ているというケースもあります。
そのような場合、「夫から婚姻費用をもらえると思っていたら、実は自分の方が支払う側だった」ということもあり得ます。
特に熟年離婚では、現役時代の収入のイメージだけで判断せず、現在の双方の収入を確認した上で、婚姻費用がいくらになるのかをあらかじめ計算しておくことが大切です。
その上で婚姻費用を受け取れるケースであれば、別居生活を続けながら時間の経過を待つことができます。
そして、別居期間が長くなれば、それ自体が夫婦関係の破綻を判断する重要な事情になっていきます。
「別居して3年になったら必ず離婚できる」、「5年経てば絶対に離婚できる」という明確なルールがあるわけではないのですが、3年、4年、5年と別居が続くことで、離婚が認められる可能性は高まっていきます。
相手が離婚を拒否するのであれば、「仕方ありません。それなら当面は婚姻費用を支払ってもらいながら別居を続けます」というたたかい方もあるのです。
もちろん、婚姻費用は請求しなければ過去にさかのぼって全額もらえるとは限りません。



別居をしたら、できるだけ早い段階で婚姻費用の請求も検討しましょう。


対処法③ 財産分与で譲歩して、離婚を優先する


三つ目は、財産分与などの条件である程度譲歩して、相手に離婚へ応じてもらう方法です。
もちろん、簡単に譲歩すべきではありません。
相手が理不尽な要求をしているのに、何でも受け入れる必要もありません。
ただ、私は離婚事件では「タイム・イズ・マネー」という考え方も必要だと思っています。
あと3年間争えば、より多く財産分与を受け取れるかもしれない。
一方で、その3年間、離婚できない状態が続きます。
一円でも多く取ることだけが、離婚事件の「勝ち」ではありません。
お金と時間、精神的な負担、そして離婚後の人生。
それらを全部含めて、どこで決着するのが一番いいのかを考えることが大切なのだと思います。


「絶対に離婚しない」という言葉も、最後まで変わらないとは限らない


そして最後に、もう一つお伝えしておきたいことがあります。
私が携わった事件でも、当初、「絶対に離婚しない」と強く主張していた旦那さんがいました。
奥様から話をしても離婚しない。
弁護士から話をしても離婚しない。
調停になっても、やはり離婚しない。
それでも、弁護士からまた同じことを説明し、調停委員からも様々な角度から話をしてもらいました。
そうして長く話し合いを続けていく中で、最終的には旦那さんの考えが変わり、離婚に応じることになったのです。
人の考えは、ずっと同じとは限りません。
最初は感情的に、「絶対に離婚しない」と言っていた人も、別居生活が続き、周囲から何度も同じ話をされ、現実を受け入れていく中で、少しずつ考えが変わることがあります。
だからこそ、熟年離婚では粘り強く交渉することがとても大切です。


まとめ|離婚を拒否されても、まだ打つ手はあります


長い間悩み、勇気を出してようやく別居した。
それなのに、「離婚しない」と言われたら、「もう一生逃れられないのでは…」と落胆されるかもしれません。
しかし、それで終わりではありません。
離婚原因や証拠が十分なのであれば、訴訟まで進める。
今すぐ離婚するのが難しければ、婚姻費用を受け取りながら時間を味方につける。
早く人生を前に進めたいのであれば、条件面を調整して離婚への合意を目指す。
そして、話し合いを何度も重ねることで、頑なだった相手の気持ちが変わることもあります。
離婚への道は、一つではありません。
溝の口テラス法律事務所では、熟年離婚やモラハラ離婚のご相談を多くお受けしています。
「別居まではできたけれど、この先どうすればいいのか分からない」
そんなときも、お一人で抱え込まず、お気軽にご相談ください。
女性のご相談者様は1時間無料





