AIに法律相談して大丈夫?弁護士が本音で語る”使える場面”と”危険なライン”

弁護士 おがわ

こんにちは。武蔵小杉、たまプラーザ、二子玉川からほど近い溝の口テラス法律事務所の代表弁護士、小川です。

「弁護士に相談するほどではないけれど、AIに聞いてみよう」
「無料だし、手軽だからとりあえずAIで調べてみた」

そう考えたことはありませんか?

AIの進化により、法律の調べものが格段に手軽になった一方で、AIの回答を鵜呑みにして不利な状況に陥るケースも出てきています。

この記事では、実際に3種類のAIを業務で使いこなしている弁護士の立場から、AIにできること・できないこと、そして後悔しないためのAIとの付き合い方をお伝えします。

目次

AI法律相談が「使える」場面とは

結論から言うと、この記事を投稿した令和8年2月時点で、AIは「調べもの」には耐えられる性能になりつつあります。

たとえば、

  • 条文の存在を確認する
  • 一般的な制度の概要を知る
  • よくあるケースの流れを把握する

こうした調べものについては、AIはスピーディーで便利、そして、1年程度前までは頻発していた誤答も大分少なくなっています。そこで、上記のような調べものなら、必ず信頼できる別の情報源でファクトチェックをすることを条件にしてAIはなかなか使えるといえるでしょう。

弁護士 おがわ

まだまだ誤答の危険性はあるのでファクトチェックは必須です。

AI法律相談のリスク|お勧めできないケース

しかし、ここで重要なのは、AIが上手くできるのは、「一般論」までという点です。

法律問題は「前提条件」で結論が大きく変わります。

そして法律相談で最も怖いのは、前提条件が少し違うだけで、結論が大きく変わることです。

たとえば離婚の場面でも、
「婚姻期間は何年か」「子どもはいるか」「夫婦の収入はどの程度か」「別居はいつからか」「不仲に至る経緯はどのようなものだったか」
これらが少し違うだけで、財産分与、慰謝料、婚姻費用、養育費の額、そして何より採るべき戦略が全く異なることがあるのです。

そしてAIは、弁護士のように、質問文に書かれていない事情を想像して補ったり、ご相談者様が重要だと気づいていない事情を、常に適切に拾い上げ、あるいは掘り下げて聞けるわけでもありません。また、仮にこのような聴き取りができるほど性能が上がったとしても、後述のとおり、弁護士でない者による有償での法律相談を禁止した弁護士法第72条との関係から実装が容易ではないと私は考えています。

その結果、「法律の考え方自体は合っているが、あなたのケースには当てはまらない」という回答が、もっともらしく提示されてしまう危険があるのです。

さらに、この記事を投稿した令和8年2月時点で気を付けなければならないのは、事実でない情報をもっともらしく作り出してしまう「ハルシネーション」という現象や、全くの誤情報を正しいかのように回答してしまうことが未だにある点です。

実際に、弁護士が、文献やインターネットでいくらリサーチをしても正解がわからない論点についてAIに尋ねたところ架空の判例をさも実在するかのように提示されたり、またごく簡単な条文操作で回答が出るものでも自信満々の誤答をされることがありました。

加えて、AIの提案する裁判の戦術はあまりに教科書的であったり、(当然ではありますが)人の感情にまで思いを馳せられておらず、悪手と言わざるを得ないものが散見されるのも事実です。

「AIと一生懸命相談して作ってきた作戦なのに、全く非現実的だった」
「AIの回答を信じて動いた結果、不利な証拠を自ら作ってしまった」

こうしたケースは私自身が実際に見聞きしました。

裁判では、一度の判断ミスが取り返しのつかない結果を招くことが少なくありません。
そして、後述のとおり、AIは責任を取ってくれないということも決して忘れてはいけません。

AIを使う場面や使う条件を間違えると手痛いダメージを負いかねないのです。

弁護士の法律相談とAIの決定的な違い

これに対して、弁護士は単に法律の答えを機械的に出しているわけではありません。

弁護士は、

ⓐ事実関係を整理し、
ⓑご相談者様が重要だと気づいていない事情を拾い上げ、
ⓒこれらを法律に当てはめて状況を整理し、
ⓓ現状及び将来の問題点を発見したうえで、
ⓔその問題についての複数の解決策を提示し、それらのメリット・デメリットをお伝えします。

そして、ⓕご相談者様がどうされたいのかを踏まえ、現実的・具体的な解決の方法論や戦略を形作っていくのです。

法律相談は、ただ法律問題の回答を出す作業ではなく、具体的な事件について、法律と弁護士の数多の経験に照らして、どう取り組んでいけばご相談者様のご希望が叶うのかをお示しする職人の技なのです。

力のある弁護士への法律相談は、現状打開のための突破口を一緒に探すことといえるでしょう。

これに対し、AIを漫然と利用することは、本物の法律相談とは一線を画する、ただただ積み上げられる情報を見上げるだけになってしまいかねないのです。

弁護士は実際どうAIを使っているのか

弁護士 おがわ

ここまで読むと、「AIは使えないのか?」と思われるかもしれません。

しかし、そうではありません。

AIは、情報収集の入口、制度理解の補助としては有用ですし、また対象について正しい知識と理解があるなら、考えを整理するツールとしても十分機能します。

問題は、AIだけで検討を完結させてしまうことです。

弁護士である私自身、AIで検討を完結させることはしていません。

私は、

  • 企業向けのセキュリティ基準を満たしたプランで利用している2種類のAI
    (入力情報が学習に使用されないもの)
  • 法律実務書を情報源に回答する弁護士向けのAI

合計3種類のAIを使って仕事をしています。

②のAIは、法律実務書のみを情報源にして回答をし、その際に参照した法律実務書も示す仕組みになっており、これでリーガルリサーチをするという使い方が最も多いです。

もっとも②の弁護士用AIはハルシネーションや誤情報を最小化できる代わりに、情報源である法律実務書にダイレクトに記載がない難しい問題だと無回答になってしまう点が弱点です。

弁護士 おがわ

そこで、難問に当たったときの法的な思考の整理や取っ掛かりをつかむための相談相手として①のセキュリティ基準の高い一般のAIを使うこともあります。

①のセキュリティ基準の高い一般のAIで思考の取っ掛かりを掴み、再度質問の方法を変えて②の弁護士用AIで法律実務書の検索をかけるというのが、難問突破の一つの解決方法です。

他にも地味な使い方ですが、①守秘を万全にしたうえで膨大な資料の精査や要約をしたり、②一般のAIに、「・・・という言い回しの別の言い方を提案して」と代案を出させたり、③文章について意見を求め校正をさせるということもあります。
裁判の局面や相手方の気性を考えて微細に表現を調整したいとき、AIの語彙力はなかなか頼りになります。

弁護士である私自身、あくまで自身の検討が先にあり、AIはリサーチ、思考整理、校正等の補助として使っており、すべてAIに任せてしまうことはもちろんしていません。

そしてAIを使う際、最も大切なことですが、必ずAI以外の信頼できる根拠を見つけています。

とはいえ、ほんの数年前は、リサーチといえば、弁護士図書館に行って一日中文献を掘り出しては読みを繰り返していたのが、わずか数分で答えにたどり着けることも多くなりました。

AIは有効に利用できれば仕事の正確性と能率を数倍にできるほどのポテンシャルがあると思います。

一方で、AIの持つ膨大な、そして時に誤りが混じる情報に踊らされず、これを最大限活用することは、実はとても難しいことだと思います。

そして、だからこそ、専門家がAIを使いこなすことに意味があるのだと思います。

ところで、AIの法律相談は「非弁行為」にならないの?

ここまでお読みいただいた方の中には、こんな疑問を持たれた方もいるかもしれません。

「そもそも、弁護士でもないAIが法律の質問に答えること自体、法律的に問題ないの?」

結論から言えば、AIサービスの提供方法によっては、その提供事業者が「非弁行為」を禁止した弁護士法第72条に違反する危険はあると私は考えています。

弁護士法第72条は、弁護士でない者が

  • 報酬を得る目的で
  • 業として法律事務を取り扱うこと

いわゆる「非弁行為」を禁止しています。

①「報酬を得る目的」はあるのか

ここでいう①「報酬を得る目的」について、令和5年8月に法務省大臣官房司法法制部が公表した文書(「AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について」)が参考になります。

同文書では、まず原則として、事業者が利用料等一切の利益供与を受けることなくサービスを提供する場合には、通常「報酬を得る目的」には該当せず、弁護士法第72条に違反しないとしています。

ただし、以下のような場合には注意が必要です。

  • 他の有償サービスを契約するよう誘導している場合(㋐)
  • 顧問料・サブスクリプション利用料・会費等の名目を問わず、金銭等を支払って利用資格を得た者に対してのみサービスを提供している場合(㋑)

こうした事情を考慮し、金銭支払等の利益供与とサービス提供との間に実質的な対価関係が認められるときには、「報酬を得る目的」に該当し得るとされています。

この見解に照らすと、有償版はもちろん、無償版であっても有償サービスへの契約誘導を伴うAIサービスの場合、①「報酬を得る目的」が認められる可能性があります。

②「法律事務の取扱い」に当たるのか

弁護士 おがわ

では、AIの法律相談は、②業として法律事務を取り扱うことに当たるのでしょうか。

弁護士法第72条の条文との関係でいうと、同条にいう「鑑定」に当たるのかという問題になります。

ここで、同条でいう「鑑定」とは、「法律上の専門的知識に基づき法律的見解を述べること」をいうとされています。

この点について、AIが「一般的な法律情報を回答すること」自体は、直ちに非弁行為にあたるとはいえず、それを超え「個別具体的な事案に対する法的判断」に至ってしまった場合には問題となる危険性が出てくると考える見解があります。

この見解は、その理由について「法律の制度や条文の内容を説明すること、つまり一般的な法律情報の提供は、非弁行為にはあたらないと考えられている書籍やウェブサイトの解説と同様といえるから」などと説明します。

そして現在の多くのAIもこの範囲で回答をするよう設定されているのだと聞きます。

しかし、一般的な法律情報の提供」と「個別具体的な事案に対する法的判断」の区別は実は明瞭なものではありません。

たとえば、①「離婚の慰謝料の相場はどのくらいですか?」という質問に対して一般的な情報を提供することは書籍などにも書いてある一般的な法律情報の提供」といえるかもしれせん。

しかし、②ご自身の色々な事情を説明したうえで「この場合の慰謝料の相場はいくらですか?」という質問に対して慰謝料額の情報を提供することは、実は、もうその人についての法律相談といえ、「個別具体的な事案に対する法的判断」に立ち入っていると言わざるを得ません。

もちろん、ただAIに相談しただけの利用者の方が同条違反を理由に処罰されるわけではありませんし、私が調べた限り、少なくとも令和8年2月時点では、この点について明確に違法と判断した確定した判例はないはずですが、非弁行為に至ってしまう危険があるようなAIの法律相談を推奨することは弁護士としてできません。

これに対しては、「弁護士法72条なんて、弁護士の職域保護のための決まりじゃないか。そんなもののために手軽なAIへの法律相談ができなくなるなんて、本末転倒だ」と思ってしまわれる方もいらっしゃるかもしれません。

弁護士 おがわ

しかし、そうではないのです。

弁護士法72条が本当に守ろうとしているのは「あなた」です

すなわち、弁護士法72条が守ろうとしているのは、弁護士制度を包含した法律秩序の維持・確立と考えられているからです。

同条は、国民の権利を守るため、弁護士の資格を持たず責任も負っていない者が法律事件に介入することを禁止する規定なのです。

弁護士には、資格要件があり、守秘義務があり、利益相反の禁止があり、弁護士会による懲戒制度があります。
また弁護士の見損じなどでご依頼者様の利益が損なわれた場合に弁護士賠償保険でこれを填補できることもあります。

弁護士 おがわ

これらは、ご依頼者様を守るための仕組みです。

しかしAIにはこれらの仕組みがありません。
弁護士法72条が守ろうとしているのは、最後のところでは、ご依頼者様の利益であり、AIの時代においてもその趣旨は色あせないどころか、むしろ重要性を増しているとさえいえます。

このような、ご依頼者様を守る仕組みが確立されていないAIを弁護士と同じように扱って法律相談することは、ご依頼者様の利益を損なうことにつながりかねないのです。

ハルシネーション・誤答の危険性、ご相談者様を守る制度の未整備、そして、弁護士法違反の可能性…。未だAIへの法律相談は、手軽ではあっても、正確性、安全性、適法性において手放しにお勧めすることはできません。

現実に、AIの中途半端な回答や誤答によりご自身の立ち位置を見誤って行動してしまい、権利実現ができなくなってしまったという事例を私は見たことがあります。
そして、AIの回答を信じた責任をAIは取ってくれず、これを填補する制度も存在しないのです。

だからこそ、私は、AIを使うとしても、あくまで一般論のリサーチの取っ掛かりとして、そして他の信頼できる情報源でファクトチェックをすることを前提に使うことが望ましいと考えています。

まとめ|「手軽に調べられる」と「安心して任せられる」は違う

AIは、私たちの生活を確実に便利にしています。

法律の世界も例外ではありません。

AIは、今でこそ誤答も散見されますが、これからも日々凄まじい速度で膨大かつ複雑な法律の知識を吸収し続け、情報量はもちろん情報の正確性についても弁護士を凌駕する日はもう遠くないように感じます。
そして、そうなったとき、弁護士法第72条の問題さえ解決するなら、AIに法律相談をしながら自身で裁判をしていくことができるのでは、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、裁判は人と人との問題を扱います。

人は決まり事や正論のみで動きません。

法的な争いは、法律だけでなく、当事者の願い、関係者の様々な思惑、抗えない時の流れ等の様々な事象に、まるで秋風に舞う落ち葉のように翻弄されて、その落ち着く場所を変えるのです。
納得のいく解決を得るためには、法律の知識だけでなく、裁判の場で、どの風に乗り、どう風を起こし、どこに落ち着かせるかを知らなければならないのです。

AIが普及した今だからこそ、「手軽に調べられる」と「安心して任せられる」は違うという点を知っていただきぜひAIに精通した弁護士の力を頼ってください。

それが、後悔しないための一番の近道だと思います。

弁護士 おがわ

AIをはじめ新しい技術を積極的に取り入れ続けている溝の口テラス法律事務所は、いつでもあなたのご相談をお待ちしています。

※本記事は、令和8年2月時点のAIの性能やAIを取り巻く法制度の状況を前提にした弁護士の見解であり、これらの変化に伴い弁護士の見解もアップデートされる可能性があることをご了解ください。

  • これって弁護士に頼んだほうがいいのかな?
  • 相談していいレベルなのかどうかわからない
  • どうしたらいいかアドバイスがほしい

このようにお悩みの方も、まずは溝の口テラス法律事務所へお気軽にお問い合わせください。

溝の口以外の、たまプラーザ、武蔵小杉、二子玉川にお住まいの方のご相談実績も豊富です。

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