弁護士 おがわこんにちは。武蔵小杉、たまプラーザ、二子玉川からほど近い溝の口テラス法律事務所の代表弁護士、小川です。
「離婚することになったけど、ペットはどちらが引き取るの?」
「ペットの養育費って請求できますか?」
「元配偶者がペットに会いたいと言っているけど、面会交流させないといけないの?」
「ペットは家族なのに、財産分与の対象になるって本当?」
当事務所にも、離婚に伴うペットの取り扱いについて、切実なご相談が寄せられることがあります。
ペットは家族の一員として大切に育ててきた存在ですが、法律上はどのように扱われるのでしょうか。
そこで今回は、上記のようなご相談を題材に
- ペットが財産分与の対象となるのか
- ペットの養育費は請求できるのか
- ペットとの面会交流は認められるのか
- ペットを「共有財産」とした裁判例の考え方
- 当事者間の合意でペットの扱いを決める方法
について、詳しく解説していきます。
私と夫は、猫を飼っていますが、離婚することになり、私が猫を引き取ることになりました。
- 猫の養育費を夫に請求できますか。
- また、夫も猫を可愛がっており、離婚後も定期的に猫に会いたいと言っています。
私は夫ともう会いたくないのですが、やはり面会交流は実施しないといけませんか。


ペットは財産分与の対象となる「物」として扱われる


民法上、ペットは、「物」(民法では、「ぶつ」と読みます。)として取り扱われます。



猫を自分の子供だと思っている弁護士小川が、大学生の頃はじめて民法を学んで、動物は「物」と扱われると知った時、「猫は家族だ!」と怒った覚えがあります。
とはいえ私が怒っても、ペットが民法上「物」であることは変わりませんから、ペットについて、人間の子供と同じように養育費が認められたり、面会交流が認められることはないというのが現状の法律の扱いです。
そして、そのペットが、婚姻財産(婚姻後に夫婦が貰ったペットであったり、婚姻後に得た夫婦の財産で購入したペット)であるなら、車やマイホームなどの「物」と同じように「財産分与」の対象になり、どちらかが分与を受け、引き取ることになるのが通常でしょう。
ペットの養育費や面会交流は認められるのか
そうすると、本ご質問のケースでも、猫ちゃんは、分与を受けて引き取ったご質問者さまの「物」になります。
その飼育費用は、自分の「物」にかかる費用としてご質問者さまが支出しないといけない一方で、上記のとおり、旦那さんに面会交流が認められることは、法律上はないということになります。
ペットを「共有財産」として費用分担を認めた裁判例


もっとも、令和2年の離婚事件で、ペットの飼育費用の分担を認めた裁判例があります(福岡家庭裁判所久留米支部・令和2年9月24日判決)。
とはいえ、この裁判例はペットの養育費を認めたものではなく、妻が、自身の自宅で犬3頭を飼育しており、別居した夫が犬3頭を引きとることが難しいという状況で、妻だけが、犬3頭を飼える妻宅の家賃を支払い続け、犬3頭分の餌代等の費用の全額を負担しなければならないのは公平を欠くと考えて、犬3頭を夫と妻の「共有」として、それぞれが持分に応じて飼育費用を負担すべきであるとしました。
つまり、あくまでペットは、「物」であるが、しかし、この裁判例の事件では、公平の観点から、犬3頭は2人の「共有物」(2人の「物」)にするべきと考え、さらに、「共有物」なのだから、「共有者」である夫もペットの飼育費用を負担するべきであると判断したのですね。
ペットが共有財産の場合、面会交流も認められる…?
この裁判例は、夫と犬3頭の面会の可否については判断していませんので確かなことは言えません。
しかし、私見では、「ペットを共有物とする」という理屈であれば、事実上、ペットとの面会が認められる可能性があると考えます。
民法第249条第1項は「各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。」と定めていますので、夫がペットと面会をするというかたちでの「使用」を要求することもできるのではないでしょうか。
当事者の合意があればペットの扱いを自由に決められる


もちろん、上記に関わらず、離婚の際にご夫婦が合意できるなら、ペットに要する費用や面会交流に関して合理的なルールを決めることは可能です。
生涯の飼育費用は、わんちゃん500万円、猫ちゃんが250万円と言われ、決してばかになる金額ではありません。
そして、何よりも、ペットとの日々はお金には代えがたい幸せです。



私も苦しかった時、悲しかった時、どれだけ猫たちに助けられたか分かりません。
民法上は「物」であっても、まぎれもない私たちの家族であるペットの幸せを考えて、話し合えると良いですね。
※本記事は、執筆時点の法令、判例、実務の取り扱いに基づいて執筆していますので、これらの改正や変更があった場合、上記と異なる取扱いがされる可能性がありますことにご留意ください。
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