
こんにちは。武蔵小杉、たまプラーザ、二子玉川からほど近い溝の口テラス法律事務所の代表弁護士、小川です。
以前「実は難しい離婚調停」という記事のなかで、離婚調停は難易度が高い裁判手続きであることをお伝えさせていただきました。


今日は、特に、婚姻期間の長いご夫婦の離婚、いわゆる熟年離婚の離婚調停は更に難易度が上がるということをお伝えしたいと思います。
熟年離婚調停が難しい理由


婚姻期間が長いご夫婦の離婚(いわゆる熟年離婚)の調停は、そうでないご夫婦の調停に比べて難易度が上がります。その主な理由として、
- 長年にわたって積み重なった相手方との確執があること
- 財産関係が複雑であること
- 皆が相手方の頑固さに諦めてしまうこと
などがあげられます。 以下に詳細に見ていきましょう。
①長年にわたって積み重なった相手方との確執があるから
まず、調停での話し合いが難航する一番の原因は、長年にわたる相手方との確執と言って良いと思います。



婚姻期間が短ければすぐに決まる話も、過去のしがらみに遡ってお互い引けなくなることも多く、何でもないことを決めることすら大変な労力がかかることがあるのです。
いつものとおり我儘で一方的な相手方の主張を簡単に受け入れられるはずもありません。
また相手方の一見合理的な提案についても、過去の傲慢だったり不合理な相手方の行動から怪しく見えてしまうことや、簡単には引いてやりたくないという気持ちが出てきてしまうこともあります。
②財産関係が複雑だから
熟年離婚の場合、長期間の婚姻生活で貯めた財産の清算の手続き(これを財産分与と言います。)も複雑な問題になりかねません。
預貯金、不動産、株式、いまだ支払われていない退職金に至るまで財産分与の対象になり、それぞれに多数の難解な問題があります。
これらを全て正確に理解し、自分自身に有利な法的主張をし、さらに相手方を説得できるような分かりやすい説明をして、その納得を得ることはとても難しいのです。
③皆が相手方の頑固さに諦めてしまうから
熟年離婚の相手方の中には、年齢を重ね、社会的な立場があったり、思考が固くなってしまっている人も多くいます。
調停委員が、あなたに、相手方の説得が難しいことを伝えると、相手方をよく知るあなたは、やはりあの頑固者との話し合いは無理かと諦めてしまいかねないのです。
熟年離婚調停を自分自身でたたかっていく場合
では熟年離婚調停において、この様な難しい相手とどのようにたたかっていけばいいのでしょうか。
ご自身だけでたたかっていく場合は、以下に挙げる準備を十分に整える必要があります。
法律の勉強をして調停に挑む


まず、弁護士に頼まず、ご自身だけで調停に臨むという場合、必ず離婚の法律を勉強していき、相手方を法的に説得できるようにしましょう。
調停も裁判手続きですから、法律の勉強をして臨まなければ、相手方の詭弁や頑固な拘り、調停の流れに飲まれてしまいかねません。
たとえば持ち家があれば、持ち家について、どのような論点があり、それらのうち、どの論点が自分と関係がありそうで、これをどのように主張することで自分に有利になるのか、必ず勉強をして臨みましょう。
調べ方は、実務書を購読するのが難しければ、法律事務所のインターネット記事を読んでみても良いでしょう。
ただし、インターネット記事には、間違っているものや、古い判例をベースにしてしまっているものも稀にあります。



そして本当に有益なアドバイスはインターネット記事には書きにくいものです。
そこで、離婚に詳しい弁護士に相談して、自身の調べた考え方で正しいかを確認し、また実践的な戦略を教えてもらいましょう。
離婚の法律を勉強せず、単身で離婚調停に挑むことは、何の準備もなく険しい雪山に挑むようなものです。必ず十分な準備をして離婚調停に挑みましょう。
しぶとく根負けせず、臨機応変に対応する
そして、法的に正しい考え方を勉強したら、これを前提にしぶとく相手を説得しましょう。
その際には、法的な正論だけでなく、相手がこちらの請求を拒んだ場合に生じる不利益を適切に伝え、「自分の考え方で合意することが、相手にとっても利益である」と説明できると、より良いでしょう。
また、非常に難しいことではありますが、相手の頑固さに負けず、正しい主張を粘り強く続けることが大切です。
一方で、さまざまな確執があったとしても、相手の提案のうち合理的な落とし所については逃さず、冷静に話し合いを進めていくべきでしょう。
相談できる仲間をつくる
そして、意外と大事なのは相談できる仲間をつくることです。
熟年離婚の場合、多くの方が長期にわたる婚姻期間の中で相手方から非難を受け続けたことが原因で、ご自身の判断に自信が持てなくなってしまっていることが多いのです。
常識すら相手方に批難され続け、「毎日『お前が間違っている、お前は常識がない』等と言われ、そうなんだと思い込んでしまっていた」、「私がおかしいのかと思ってしまうこともあったが、弁護士に相談して、やはり相手方がおかしいのだと思えた」等と言われる方がとても多くいらっしゃいます。
熟年離婚調停を弁護士に頼む場合


上記のように、十分な法律の勉強をして調停に臨み、適時適切な対応をし、相談できる仲間を確保することが難しい方も多くおられることと思います。
弁護士に頼めば、複雑な財産関係はすぐに整理してもらえ、各争点についてもあなたに有利な法律論を武器にしてたたかってくれるでしょう。
また、弁護士と相手方には確執はありませんから弁護士はあなたの利益だけを考えて、合理的な合意案を逃さず交渉できます。
さらに、相手がどんなに頑固であっても、心配はいりません。



離婚事件に注力している弁護士からすれば、いつものことです。
弁護士は、相手方が音を上げるまで説得を続け、それでもダメなら節目節目で、交渉➡調停➡訴訟と紛争解決のフェイズを上げていけば、いつかは終結できることを知っているのですから、頑固な相手方でも根負けすることもありません。
もちろん、誰よりも離婚事件を見てきた弁護士があなたの無二の仲間になり親身になって相談を聞いてくれるのですから、方向性を見失ってしまったり孤独になってしまうこともありません。
あなたの未来のために


長い間、あなたが我慢してきたことは、きっと、あなたを知る方は十分にわかっています。
子供たちのために、高齢の祖父母を心配させないために、一人ではご飯も作れない相手方をどこか哀れに思って、そんな様々な理由があったかもしれません。
溝の口テラス法律事務所では、数多くの熟年離婚事件に携わってきました。
頑固で話のわからない相手方とも毎日のように交渉や調停をして解決していますので、ぜひお一人でたたかうことが辛くなったら、いつでもお問い合わせください。