【モラハラ夫と別居する方へ】婚姻費用の計算・請求時期・子供の習い事代まで弁護士がQ&Aで全解説

弁護士 おがわ

こんにちは。武蔵小杉、たまプラーザ、二子玉川からほど近い溝の口テラス法律事務所の代表弁護士、小川です。

「モラハラ夫と別居したいけど、その後の生活費が心配…」
「子どもを連れて家を出たら、婚姻費用を請求できるって聞いたけど、本当にもらえるの?いくらくらい?」
「もし請求したら、夫が逆上しないか不安…」

当事務所にも、このような切実なご相談が日々寄せられます。

婚姻費用の請求は、別居後のご自身とお子様の生活を守るために非常に重要な手続きです。
正しい知識を持ち、適切なタイミングで、確実な方法で請求することが何よりも大切です。

そこで今回は、ご相談者さまから頂いた以下のご質問をもとに、

  • 婚姻費用とは何か、なぜ請求できるのか
  • 婚姻費用の金額はどのように決まるのか(算定表の見方など)
  • 婚姻費用はいつから請求できるのか
  • 子どもの習い事代などを婚姻費用とは別に請求できるのか

について、詳しく解説していきます。

ご質問
  • モラハラ夫と別居しようと考えています。それで、離婚経験のある友人から、別居すると「婚姻費用」というのがもらえると聞きました。
    この「婚姻費用」とはなんですか?もらえるとしていくらもらえますか?
  • この婚姻費用はいつからもらえますか?
  • 子供が別居前からピアノの習い事をしています。レッスン料などは婚姻費用とは別に払ってもらえるんですか?
目次

婚姻費用とは?別居中の生活費|基本的な意味と法的根拠を解説

婚姻費用とは、夫婦と未成熟の子のための生活費のことです。

夫婦は互いに扶養義務を負っているので、婚姻期間中は、たとえ別居していたとしても、収入が高い方が、収入が低い方に対し、婚姻費用を支払わなくてはならないことが通常です。

より詳しくご説明すると、婚姻費用とは、夫婦が婚姻生活を維持するために必要な一切の費用であり、それには、衣食住の費用、医療費、教育費、子の養育費、保険料などが含まれます。

夫婦は、その収入等に応じた生活が維持できるように必要な費用を分担しなければなりません。

そこで、ご相談者さまが別居後も子供さんを監護し、相手方の方がご相談者さまより収入が多い場合などは、相手方がご相談者さまに対して婚姻費用を支払わなければならないことが普通なのです。

「仕方がなかったとはいえ子供も連れてきてしまって婚姻費用なんて請求をしたらモラハラ夫は怒るんじゃないか」と心配される方も多くおられます。

しかし、民法は、760条で「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する」として婚姻費用の分担義務があると定めているのですから、婚姻費用請求は法律上の権利なのです。

弁護士 おがわ

ご自身の、そして何より子供さんのために婚姻費用を請求していきましょう。

婚姻費用の相場はいくら?家庭裁判所の算定表と計算方法

次に、婚姻費用の算定方法をご説明します。

婚姻費用の算定方法は、夫婦の収入や生活状況を基に、家庭裁判所の「算定表」を活用することが一般的です。

「算定表」とは、収入額や子供の人数・年齢などを考慮し算定式に基づいて分担額を計算した表のことです。

この算定表を見ると、たとえば、こちらの年収が300万円、モラハラ夫の年収が700万円、こちらが15歳以上の子供さん2人とともに別居したとした場合、婚姻費用は、毎月14万台くらいになりそうです。

ただし、私立学校の学費や住宅ローンの負担などの具体的な事情に応じて修正が必要な場合もありますので、具体的にいくらもらえそうかは弁護士に確認しましょう。

婚姻費用はいつから請求できる?請求のタイミングと遡及請求の可否

婚姻費用は、現在の実務では、婚姻費用を請求したときから相手方の支払義務が生じ、請求をした月からもらえることになっています。

ただ口頭で請求しても、モラハラ夫のような人であれば、「そんな請求はされていない、証拠はあるのか」等と言いかねません。

そこで確実に請求が認められるよう、別居後すぐに婚姻費用の分担請求調停や審判を申し立てたり、婚姻費用を請求する内容証明郵便を送って、相手方が言い逃れをできないようにしましょう。

別居後しばらく婚姻費用の請求をしなかった場合、請求前の分については事情によっては認められたり、離婚時の財産分与で考慮される場合もありますが、簡単ではありませんので、別居をしたら、まず急ぐのが婚姻費用の請求だということは覚えておきましょう。

子供の習い事代(ピアノ等)は婚姻費用とは別?追加で請求できるケース

夫婦が同居中に始めたお子様の習い事については、収入等も考慮して、その習い事を続けることが不合理である事情がなければ、通常、その習い事に必要となる費用の分担義務が相手方にあるといえます。

そこで、ご相談者さまの場合も、算定表から算出した婚姻費用とは別に、子供さんが同居時から習っているピアノのレッスン料の分担を請求できる可能性はあるでしょう。

その場合、ご夫婦の収入や社会的地位に応じたものであれば、合宿や発表会の参加費用、その際の衣装料、ご相談者さまの分も含めた旅費・宿泊費なども分担してもらえることがあります。

一方で、たとえば、別居後に始めた習い事については別途の考慮が必要になる場合があります。

また、習い事費用の具体的な分担額についても、精密な計算が必要になることがありますので、詳細は離婚事件に詳しい弁護士に相談しましょう。

最後に|婚姻費用請求で後悔しないための重要ポイントと専門家への相談

今回は、婚姻費用に関するご質問についてご回答しました。

弁護士 おがわ

婚姻費用を請求すれば、別居後の生活の不安を少しでも少なくできそうですね。

ただ婚姻費用は請求した月からカウントされるのが現在の実務の原則なので、別居したら必ず直ぐに婚姻費用を請求しましょう。その方法も内容証明郵便や調停申立など相手が言い訳できない方法を選びましょう。

また、習い事などの婚姻費用を増額できる事情がある場合、算定表だけを見て婚姻費用を簡単に決めてしまったら損をしてしまうかもしれません。

婚姻費用を請求するときは、必ず離婚事件に注力している弁護士に相談をして、ご相談者さまが一体いくら請求できるのかを確認しましょう。

溝の口テラス法律事務所は、いつでもあなたからのご相談をお待ちしております。お気軽にご相談ください。

※本記事は、執筆時点の法令、判例、実務の取り扱いに基づいて執筆していますので、これらの改正や変更があった場合、上記と異なる取扱いがされる可能性があります。

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