「デキる人」ほど調停で精神的に疲弊する理由。その優秀さが不安を招く罠とは?

弁護士 おがわ

こんにちは。武蔵小杉、たまプラーザ、二子玉川からほど近い溝の口テラス法律事務所の代表弁護士、小川です。

以前「弁護士なしの調停、実はデキる人ほど苦労する!?3つの理由」という記事を掲載し、沢山の方に読んでいただけました。

今回は、特に、デキる人の調停での精神的負担にフォーカスしてこの記事を補強し、デキる人ほど苦労する調停について理解を深めていきたいと思います。

目次

なぜ調停で苦悩する?デキる人が陥る「悪い未来の予測」と「思考の迷宮」

特に自分で法律書面や資料を作ってしまうようなデキる人からのご相談をいただいた際、多くの高度なご質問をお受けします。

そして、そのうち、デキる人特有といってもいいご質問が、「もし今後、・・・という事態になったら…」「仮にこのような証拠がでてきたら…」という将来の仮の事態に関するご質問です。

「もし仮に…」優秀さゆえに“悪い未来”を予測しすぎてしまう

たとえば、デキる人から離婚調停をお受けしたときのこんな質問です。

「離婚調停に夫が出てこなかった時はどうなりますか?夫の性格ですと逃げ回る気がします。もし出てこなかったとして、財産分与で譲歩するので出てきてほしいという手紙を私から書いて郵送した方がいいのでしょうか?また、その手紙を送った場合、夫が私との話し合いの時に提案してきた『子供名義の貯金は全額あげる』という話はどのような影響をうけますか?」

こんな感じで、この方はデキる人だなと感じる方ほど、将来の仮の事態を想定し、この事態への対応まで考えたうえでのご質問をされることが多くあるのです。

しかし、多くの場合、デキる人のご心配は、弁護士からすれば「現段階で、そこまで考える必要はない」というものです。

上記の例でも、奥様に離婚を殊更に急いでいる事情がないとして、ご質問にご回答するなら、

「旦那さんが調停に出てこなかった場合は、裁判所から旦那さんに次回は出席するよう連絡をしてもらいましょうか。

調停への出席と財産分与での譲歩をバーターにしてしまうと、旦那さんが次回出席したとしても、それ以降も事あるごとに譲歩を迫ってくる危険がありますのでお勧めできません。

また万事を尽くしても、旦那さんが出てこなければ、離婚調停を不成立にして離婚訴訟を提起していくことになります。離婚訴訟になって出てくることもありますし、ここでも出てこなければ旦那さん欠席の上で手続きを進めていくことになりますので、まだ焦って色々考えなくても大丈夫と思います」

などとご回答することになると思います。

弁護士 おがわ

デキる人は弁護士が説明すると、すぐに理解して安心してくださいます。

それでも時間が経つと、とても不安そうな表情で、「もし仮に・・・」「万が一この後・・・」と新たな将来の不安を発見しご質問をされるのです。

法律の壁とネット情報。「分からない」が不安を増幅させる「思考の迷宮」

デキる人は、デキるが故に未来を予測できます。

まして離婚事件や相続事件のような相手の性格までよく知ってる場合、デキる人は相手の性格を前提にその行動を予測し、悪い状況をいくつも想定したうえで、さらにその状況への対策を立てようとします。

そうすると、デキる人の頭の中で、この予測と対策の分だけ悪い未来が枝分かれし、まるで、日の光を遮って生い茂る大木のようにその思考に根をはって立ちふさがることになります。

加えて、その迷宮のように育った悪い未来の樹形図には、難解な法律の話が関わってこざるを得ませんから、簡単には対応策が考え付かず、あるいはせっかく考えても本当に正しいかの確証が持てないことが普通です。

ここでデキる人は、事態を打開し不安を掻き消そうと、膨大な量のネット情報に当たり、難解な法律論を理解しようと努力します。

しかし、残念ながら、これで疑問が完全に解消することはほとんどありません。

ネット情報が本当に正しいか、正しいとして本事件の場合に当てはまるのかという判断は、弁護士であっても簡単でないことがありますし、仮に法的知識が万全に修得できたとしても、修得した知識を調停でどのように活用するかという方法論や駆け引きのメソッドは、ネット記事にはほとんど書いていないのですから、やむを得ません。

それどころか、多くの場合、懸命の調査は更なる疑問を生み、最終的には、本件と全く関係ない別の論点を延々と検討してしまったり、あるいは紛争全体の解決方針など忘れてしまって、超高度な、しかし、ほとんど事案の有利な解決に影響しない論点に思考が囚われるなどしてしまい、その結果、裁判の流れもどんどん不本意な方向に進んでしまうということが往々にしてあるのです。

このように、デキる人の予測能力と対応能力が、法律という専門分野に妨げられてしまった結果、正しい予測と対応を困難にし、迷宮に迷い込みかねないのです。

そして「分からない」「理解ができない」「自分の思っていた通りに進まない」ということが更なる不安を生み、どんどん不安が積み重なっていくという泥沼に陥ってしまうのです。

その優秀さの活かし方。能力は「弁護士の選別」にこそ使うべき

では、デキる人が、その能力を法的紛争の解決に活かすにはどうすべきなのでしょうか。

弁護士 おがわ

私は、デキる人は、弁護士の選別にこそ、その能力を使うべきと思います。

弁護士の能力も千差万別です。

仕事に誇りを持ち、決闘にでも赴くかのように一つ一つの事件に挑み、己が身を研ぎ続けている侍のような弁護士もいます。

一方で、残念ながら、もう何年も実務書を開いておらず、なんとなく仕事をこなしてしまっている弁護士もいるのだろうと感じます。

デキる人であれば、自分と同じデキる弁護士のにおいを感じることは、専門外である法律を習得するよりはるかに容易に、そして感覚的にできるはずですから、懸命にネット記事を追い続けるよりよほど分かりやすく成果を出せると思います。

そして、デキる弁護士を見つけられたなら後は簡単です。

デキる弁護士は言うなれば高峰の案内人です。

あなたは鍛え上げた登山家のように、弁護士のガイドに従い迷うことなく、その能力を最大限発揮し、頂きに至れば良いのです。

たとえば、デキる弁護士は法律や戦略は知っていても、事実関係を当事者のあなた以上に知っているということはありません。しかし、弁護士の示す法律論を理解できるあなたであれば「その理屈なら、こういう事実もあるので更に有利になるのでは?」とか「こういう資料もあるのですが、有利に使えるのでは?」と戦局を一変させられるアドバイスを弁護士にできるはずです。

まとめ:デキる人こそ調停でメンタルを削られる。その能力で「デキる弁護士」を見定めてください

今日は、デキる人の裁判での大変さを特にメンタル面にフォーカスしてお伝えしました。
これまで見てきた通り、デキる人はその優秀さ故に、さまざまな未来、特に悪い未来を予測し不安を感じます。

そして、その幾重にも枝分かれした悪い未来に対応するため法律論を調べ考え、しかし、当然十分に理解など出来ず、さらに不安が積み重なります。

そのようななかで、当然門外漢である法律について常に正しい主張をできるわけではありませんので、議論が錯綜し、調停が混乱して先行きが不透明になります。

悪い未来を予測し、分からないもの、難解なもので頭がいっぱいになり、さらにはどんどん調停の先行きが見えなくなって、それでも不安になるなという方が無理な話です。

「弁護士なしの調停、実はデキる人ほど苦労する!?3つの理由」の記事でもお話ししたとおり、デキることは裁判を有利にしないことがあるばかりか、さらに、デキるが故にメンタルにまでダメージを受けることがあるということ、だからこそデキる人はその能力を弁護士の選別にこそ活用すべきときがあることを知っていただければ幸いです。

溝の口テラス法律事務所は、宅建士・行政書士の資格に加え、司法書士の資格と実務経験を持ち、就労しながら合格率わずか約4%の司法試験予備試験に合格して弁護士になった代表の小川が 、デキる人からのご相談にも自信をもって対応しております。

弁護士 おがわ

代表弁護士小川がデキる弁護士かどうか、是非あなたの眼で見定めてください。

溝の口テラス法律事務所は、いつでもあなたのご相談をお待ちしています。

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