【弁護士監修】モラハラ離婚での通帳持ち出しは違法?別居時の財産持ち出しの法的判断と注意点

弁護士 おがわ

こんにちは。武蔵小杉、たまプラーザ、二子玉川からほど近い溝の口テラス法律事務所の代表弁護士、小川です。

今回は当事務所にいただいたご相談の中から、モラハラ離婚を検討している方から多く寄せられる『別居時の通帳持ち出し』に関するご質問にお答えした内容を記事にしました。

モラハラ被害に悩まれている方々の実際の不安や疑問に基づいた内容ですので、同じようなお悩みを抱えている方のお役に立てれば幸いです。

ご質問

子供にもモラハラ をするモラハラ夫と決別するため、子供を連れて別居をしようと考えています。

しかし、モラハラ夫から経済的DVを受けており、私が自由に動かせるお金がありません。

別居費用は両親に工面してもらえそうですが、別居後の生活費が心配です。

別居直後の生活のため、別居のとき、モラハラ夫名義の通帳を持ち出してもいいのでしょうか?また持ち出して、その中のお金を使ってしまった場合、それはいつまでに返さなくてはいけないのでしょうか?

このようなご相談は、経済的DVに悩まれている方から非常に多くいただきます。別居を決意しても、経済面での不安が大きな障壁となるケースは珍しくありません。

このご質問には、主に2つの法的ポイントがあります。

  1. 別居時に配偶者名義の通帳を持ち出すことの適法性
  2. 持ち出したお金の清算時期について

それでは、これらの点について法的な観点から解説していきます。

目次

別居時のモラハラ夫名義通帳の持ち出しは違法行為になるのか

まず、ご回答の前に注意事項として、別居後、ご相談者様はモラハラ夫に対して、婚姻費用という月々の生活費を請求できる可能性があります。

しかし、この婚姻費用は請求をしても直ぐに支払われるわけではありません。

そこで、ご相談者様が、別居直後の生活のためにモラハラ夫名義の通帳を持ち出していいのかを考えなければいけません。

別居時に夫婦の財産を持ち出すことが不法行為に該当するかが問題となった東京地方裁判所の裁判例があります。

ところで、民法七六二条一項によれば、婚姻中一方の名で得た財産はその特有財産であるとされているが、夫婦の一方が婚姻中に他方の協力の下に稼働して得た収入で取得した財産は、実質的には夫婦の共有財産であって、性質上特に一方のみが管理するような財産を除いては、婚姻継続中は夫婦共同で右財産を管理するのが通常であり、婚姻関係が破綻して離婚に至った場合には、その実質的共有関係を清算するためには、財産分与が予定されているなどの事実を考慮すると、婚姻関係が悪化して、夫婦の一方か別居決意して家を出る際、夫婦の実質的共有に属する財産の一部を持ち出したとしても、その持ち出した財産が招来の財産分与として考えられる対象、範囲を著しく逸脱するとか、他方を困惑させる等不当な目的をもって持ち出したなどの特段の事情がない限り違法性はなく、不法行為とならないものと解するのが相当である。
そして、被告は婚姻関係が悪化して離婚を決意して別居したものであり、被告が離婚及び財産分与を提起して訴訟中であって、被告が別居に際し持ち出した債券等が財産分与として考えられる対象、範囲を著しく逸脱するものでないことは、当裁判所に顕著な事実である。また、被告が不当な目的で債券を持ち出したことを認めるに足りる証拠はないから、被岩がこれらの債券を持ち出したことに違法性はなく、不法行為は成立しないというべきである。(下線部は本記事執筆者が追記し、その他は原文ママです。)

東京地裁昭和63年(ワ)第13281号 損害賠償等請求事件 平成4年8月26日判決(一部抜粋して引用)

かみ砕いてご説明をすると、同裁判例は奥さんが別居するときに、結婚してから夫婦で協力して貯めたお金(「夫婦共有財産」と呼ばれます)を持ち出すことは、

  • 持ち出した金額があまりにも多すぎる場合
  • 夫を困らせるなど、不当な目的があった場合

を除いて違法ではないとされています。

持ち出した通帳のお金はいつまでに返済する必要があるのか

では、実際に、持ち出した通帳からお金を引き出して使った場合、このお金の清算はどうなるのでしょうか?

別居時に持ち出した通帳から生活のために引き出して使ったお金については、財産分与の際、すなわち離婚の成立時に清算すればいいでしょう。

たとえば、 夫婦共有財産が全部で貯金1000万円であり、ご相談者様がそのうち100万円が入った通帳を持ち出して別居後の生活費に100万円全額を使ったという場合、ご相談者様は、財産分与の際(離婚が成立する時)に400万円(夫婦共有財産総額1000万円÷2-別居時に持ち出した100万円)をモラハラ夫から支払ってもらって清算すれば良いということですね。

まとめ

以上のとおり、ご相談者様が、別居時に、夫婦共有財産であるモラハラ夫名義の通帳を持ち出したとしても、裁判例の言う「特段の事情」がなければ、それが不法行為となることはなさそうですし、すぐに返却しなければならないということもなさそうです。

しかし、上記の裁判例の判断を見る限り、通帳内のお金が、婚姻後に夫婦の協力で得た「夫婦共有財産」ではなく、モラハラ夫の婚姻前の貯蓄であったり、モラハラ夫が実家の相続で得た「特有財産」であるなど裁判例と異なる事情があれば、別居時の持ち出しが不法行為にならないとは言い切れません。

そこで別居の際には、後で問題にならないよう、必ず離婚事件の経験豊富な弁護士に相談をしましょう。

※本記事は、執筆時点の法令、裁判例、実務の取り扱いに基づいて執筆していますので、これらの改正や変更があった場合、上記と異なる取扱いがされる可能性があります。

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