こんにちは。武蔵小杉、たまプラーザ、二子玉川からほど近い溝の口テラス法律事務所の代表弁護士、小川です。
面会交流とは、別居または離婚した両親のうち、子どもと日常的に一緒に暮らしていない親が、定期的に子どもと会って食事をしたり遊んだりする交流のことです。
この記事では、面会交流の重要性について、一般的に言われる理由とは少し異なる視点からご説明します。
通常、面会交流が重要視される主な理由は「子の福祉」、つまり子どもの幸福や健全な成長にあるとされています。この考えは確かに正しく、異論の余地はありません。
しかし、面会交流には子の福祉以外にも重要な側面があります。本記事では、以下の2点について詳しく解説していきます。
- 離婚交渉の円滑化: 適切な面会交流の実施が、離婚の交渉をスムーズにする可能性があります。
- 監護親の生活の質向上: 子どもの年齢によっては、面会交流が監護親の生活にゆとりをもたらすことがあります。
ここで用語の説明をしておきましょう。
- 監護親:別居している(元)夫婦のうち、子どもを引き取って一緒に暮らしている親
- 非監護親:子どもと別居している親
これから、面会交流が監護親にもたらすメリットについて、具体的にお伝えしていきます。
この記事が離婚や別居を経験された方や検討中の方にとって、新たな視点を提供しより良い決断の助けとなれば幸いです。
面会交流が子供の幸福や健全な成長につながること
よく離婚事件の実務の教科書で言われる「面会交流をすることで、子供さんが両親に愛されていることを実感して幸福感を感じ、健全に成長できる」という面会交流の良い影響は、もちろん全くもってその通りと思います。
また、たとえば子供さんが友達との会話の中で両親の話になったとき、非監護親との関係について話すことができず疎外感を感じてしまうなどの辛い経験をさせることも減るでしょう。
面会交流実施による監護親のメリット
ただ、このようなメリットを監護親の方が感じ取りにくいのも事実です。
監護親に気を使って、わざと面会交流に興味のない、あるいは嫌がる振りをする子供さんもいます。
仕事や育児に忙殺されている監護親の方のなかには、「毎日こんなに大変なのに、喜んでいないように見える子供を言い聞かせて、あんな(元)配偶者のために面会交流の場をセッティングしないといけないのはなぜ?」と思ってしまう方もおられるかもしれません。
少なくとも私にはこのような監護親の方の感情を簡単には否定できません。
しかし、面会交流は、監護親の方にも多くのメリットをもたらすのです。
これは、実際に充実した面会交流を継続して実施できた監護親の方の多くが実感できていることです。
以下では、この監護親のメリットを詳述していきます。
- 離婚の交渉もうまく行くことにつながるというメリット
- 子どもさんの年齢によっては監護親の生活も楽になるというメリット
- その他のメリット
これらのメリットについて、順を追って説明していきます。
離婚の争いが緩和されるというメリット
私が最も大きく感じるところは、離婚の争いが緩和されるという点です。
そのような中、子供とは繋がっていられることが分かることで、非監護親の監護親に対するわだかまりは小さくなるのです。
実際に、面会交流を充実させながら継続していたところ、これと関係のない争点である婚姻中に貯めた財産の分け方(財産分与)に関する争点で、強硬な態度をとっていた相手方が大きく譲歩することを提案し始めたことがありました。
そこから空気が変わり、一気に早期解決に向かいました。
また、離婚を拒否していた相手方が離婚を受け入れたこともありました。
充実した面会交流を続けたことで、結果として争いが緩和されたのです。
もちろん、子の福祉が目的である面会交流の実施を、夫婦の財産の清算が目的である財産分与の交換条件とするなどのことは、子の福祉をないがしろにするものですので、主張してはいけません(面会交流の目的は、あくまで子の福祉であり、離婚を有利に運ぶための交換条件にしてはいけないのです。)。
しかし充実した面会交流を通じて、非監護親の監護親へのわだかまりが減少し、また、たった一人で監護をしていく監護親の苦労に非監護親が想いを馳せられるようになることがあります。
そして、その結果として、他の夫婦間の様々な争いが、一挙に解決してしまうことが確かにあるのです。
監護親の時間が作れ、心が休まるというメリット
別居後、仕事と育児に忙殺され心身ともに疲弊してしまう監護親の方がとても多くおられます。
長期間続く子育てを頑張り続けられる人などいませんし、限界であるのに頑張ろうとすれば適切な育児などできないでしょう。
仕事も育児も絶対に休むことが必要なのです。 この点について、面会交流が実施されている時間は、もちろん一時的ではありますが子育てから解放されます。
もちろんこれ自体はその通りで、準備や説得は大変だと思います。
一方で、面会交流の時間や頻度が充分になれば、下記のように、この準備や説得にかかる時間も短縮されたり相対的に小さなものになるはずですし、面会交流中落ち着かないこともなくなるはずです。
つまり、
- 一回の面会交流の時間が長くなればその分休める時間は増え、㋐準備の時間の割合も相対的に小さくなります
- ㋑頻度が多くなれば子供さんも面会交流をすることが習慣になるので、説得をして行かせなければならない機会は減るでしょう
- 面会交流の実績ができてくれば監護親の方も非監護親を面会交流に関しては信用できるようになり、㋒ハラハラせず、落ち着いて休めるようになるでしょう
そうであれば、面会交流が充実すればするほど、付随事項の面倒さや問題点は小さくなっていき、ご自身の休める時間が多くなるという良い循環があるのです。
その他の監護親のメリット
上記以外にも、子供さんとの面会交流が離婚後も続けば、非監護親は、(離婚の際に約束しても消極的であることが多い)習い事代や私学の費用分担の協力に積極的になるかもしれません。
実の子供とはいえ、長期間会えておらず、学校の成績も習い事の成果も分からない状況で多額の教育費を分担しなければならないことが複雑な心情であるというのは、一応の理解はできなくもありません。
しかし、頻繁に面会交流ができていれば、子供さんの教育に強い興味を持てるでしょうから、学費を分担する約束を履行したり、約束をしていなくても払う気になってくれることも多いでしょう。
充実した面会交流は、スムーズな諸費用の分担にもつながるのです。
自分を大切にすることが子供さんを大切にすることにつながる
離婚が決まらず、監護親の方の精神状態が不安定であれば、子供さんにも影響は出ます。
また、別居や離婚により子供さん自身が不安定な精神状態にならざるを得ないなか、監護親の方が多忙や疲労から、笑顔がつくれなかったり、子供さんを十分に気にしてあげられない状態が続けば、子供さんはさらに寂しい思いをし、その成長に重大な影を落としてしまいかねません。
離婚や別居の後、自分がしっかりせねばと頑張りすぎてしまう監護親の方はとても多いです。
しかし、ご自身を大切にすることは子供さんを守ることに直結し、かつ、ご自身の幸福が子供さんの幸福の一部なのだということを確認していただきたいのです。
自身の心身が限界であるのに、自身の子供とはいえ、その心情の細部まで気遣える人はほとんどいないはずです。
だからこそ、自身が頑張ることでなく、休むことを第一に考えて色々なものを活用してほしいのです。
上記のとおり、私は、実務の教科書に書いてあるような子の福祉(子供さんの幸福や健全な成長)という面会交流の趣旨を否定するつもりは一切なく、むしろ全く持ってその通りと思います。また、面会交流はあくまで子の福祉のために充実させるべきですから、これを離婚の他の条件とバーターにしてはいけないことは言うまでもないことです。
「あなたは親なのだから、子供のために面会交流をしてあげないといけないのですよ」等と他人に言われて、すんなり腑に落ちる余裕のある監護親の方など多くはおられないと私は思うのです。
だからこそ、充実した面会交流が、結果として離婚の争いを鎮静化させることがあり、また、ご自身の心身に休息をもたらし得る制度であるということ、そして、その結果、監護親の方に笑顔が戻れば、より一層子供さんの幸福につながるのだということを確認していただきたく、本記事を書かせていただきました。
なんでも長期間続くものは頑張りすぎないことが継続の秘訣です。
頑張りすぎないために、ぜひ面会交流も含め、ご自身が休める方法を考えてみてください。
- これって弁護士に頼んだほうがいいのかな?
- 相談していいレベルなのかどうかわからない
- どうしたらいいかアドバイスがほしい
このようにお悩みの方も、まずは溝の口テラス法律事務所へお気軽にお問い合わせください。
溝の口以外の、たまプラーザ、武蔵小杉、二子玉川にお住まいの方のご相談実績も豊富です。
※本記事は、面会交流の実施が子供さんに悪影響を与えない事例を想定しています。非監護親の虐待など不適切な行為があったり、子供さんの拒否の感情が強い事例の場合は、まず「そもそも面会交流を実施すべきか」、「するとしてどのような方法で実施するべきか」という検討から綿密にする必要があることをご注意ください。