AIの「満点回答」では勝てない理由。弁護士の戦術と戦略が結果を変える

弁護士 おがわ

こんにちは。武蔵小杉、たまプラーザ、二子玉川からほど近い溝の口テラス法律事務所の代表弁護士、小川です。

「弁護士に頼んで、結局なにをしてくれるんだろう」

「ネットで調べれば情報は出てくるし、最近はAIにも聞ける。高い費用を払ってまで依頼する意味が本当にあるのだろうか」

こうしたご相談前の率直な疑問は、よくお聞きします。

確かに、知識だけであればAIが弁護士を凌ぐ時代になりつつあるのは事実です。

弁護士 おがわ

私自身ずいぶん前からAIを使っていますが、その能力の伸びには目を見張るものがあります。

しかし、それでもなお、AIが弁護士の代わりにはなれない領域があるのです。

今日は、その分野の経験を十分に積んだ弁護士だからこそできる「たたかい方」戦術と戦略についてお話しします。

目次

弁護士の「戦術」と「戦略」とは?

AIにできず弁護士にできること。それはズバリ、実戦的な戦術と戦略をつくれることにあります。

ここで「戦術」とは「個々の場面でどう勝つか」という具体的なたたかいの方法のことを指し、「戦略」とは「全体としてどう勝つか」という大きな方針のことを指します。

正しい回答が”悪手”になる?弁護士の「戦術」とは

まずは「戦術」の例を挙げてみます。

たとえば、こちらの情報を十分に持っていない可能性が高い相手方から、「甲」という法的請求をするという手紙がきたとします。

ここで「甲」の請求にはA、B、Cという法律上の要件が必要です。

しかし相手方の手紙には、A、B、Cについてきちんとは触れられず、ざっくりとAの要件に該当するかのように見える事実が書かれたうえで、「甲の請求をします」としか書かれていません。

この時、どのような回答をすべきでしょうか。

AIが出す「満点回答」

この事例でAIに質問をすると、以下のような回答がされることがあります。

  • 甲の請求には、A、B、Cの要件が必要である。
  • 本件では、A、Bの要件は満たされている。
  • しかし、Zという事情があるからCは満たされていない。
  • したがって、相手方の甲の請求は認められない。

ロジックとしては極めて正しい回答です。司法試験の答案に書くなら満点でしょう。

しかし、実際の法的紛争の解答としては、明確な悪手と言わざるを得ません。

なぜ「正しい回答」が悪手なのか

理由は、こちらの情報を持っていない可能性が高く、こちらの手の内を伺っているであろう相手方に、AとBの要件に該当する事実があると教えてしまうからです。

弁護士 おがわ

これは相手に塩を贈るようなものです。

なぜなら、A、Bの要件に該当する事実があると分かれば、相手の知っている事実によって、Cの要件まで満たされてしまうかもしれません。

また「Zという事情があるからCは満たされていない」と答えてしまえば、相手が知っている事実と合わせて「Zという事情は実は認められないこと」が証明され、結局Cの要件も満たされてしまうかもしれないのです。

さらに、Cの要件が満たされなかったとしても、AとBの要件を満たす事実が存在すると知った相手方が、A、B、Dの要件で請求できる別の「乙」という請求に切り替えてくる可能性もあります。

つまりここでは、正しいロジックを組んで教科書的な解答をすることが正解ではなく、虎視眈々と勝機を狙っている相手に隙を見せないことが正解なのです。

もちろん、場面が変われば対応も変わります。ガチガチにロジックを組んで論破することが正解の場合も当然あるでしょう。また隙を見せないことが大事とはいっても、全く回答しないとか、事実と異なることを回答してしまう、法的に開示義務のある事項を開示しないなどはいけません。ルールに悖りあるいは違反し、かえって後になって自分の立場を悪くしてしまいかねません。

相手の手紙への回答の仕方一つをとっても、こちらと相手方の関係、請求の内容、相手方の持っている情報、紛争のこれまでの経過、その請求をめぐる裁判での一般的な扱い、そして何より次にお示しする「戦略」のあり方など様々な事情に左右され、しかも法律のルールを守って回答する必要があるのですから、一律の解答はできないのです。

このように、AIにとってゴールである「間違いがない回答」は、手練れの弁護士にとっては、その戦術のスタートラインでしかないことがあるのです。

解決までの道筋を描く、弁護士の「戦略」とは

次に「戦略」の話です。

経験豊富な弁護士は、はじめのご相談時におおまかな決着の付け方まで、ぼんやりと思い浮かべます。

「ここは上手くいかないだろう」
「ここは取れるだろう」
「そうするとこんな感じで終われるだろう」
「ならばこう進めていこうか」

必要な事実を聞き終えた弁護士は、大きな終結までの地図をぼんやりと思い浮かべます。

そしてそれは、これまで同種の事件を解決してきた弁護士であるからこそ、自然に浮かんでくるものです。

これが「戦略」。いわば、弁護士の経験が生成する結果の予測です。

上記した「戦術」は、たとえるなら、目的地までの多数ある難所の乗り越え方です。

目的地までの地図である「戦略」なしには、戦術は生まれません。

法律だけでは見えない「相手の属性」

また、この時、法的な形勢と同じくらい弁護士の頭に浮かぶのは、本来、法的な判断とは別であるはずの相手方の性格や職業などを含む「属性」です。

「こういう社会的な立場の相手だと、きっと交渉で落ち着くだろう。ならば、まずは不必要に対立を煽ってしまわないよう丁寧に接した方がいい」

「こんな乱暴な相手方だと、訴訟も考えなくてはいけないかもしれない。だとすれば、弱気に見られるような手紙にすべきではない」

「この相手方は、早く終わらせないと無一文になりかねない」

現在の法的な形勢から相手方の性格、立場まで参照し、これを数多の解決実績に照らして「戦略」を想起し、どのような「戦術」で挑むか決定する。これらを遂行しながら、絶えず微調整を繰り返す。

そしてここでも、それは時に教科書的な正解とは大きくズレることがあります。

それが弁護士の仕事の中核なのです。

まとめ|AIの回答はスタートライン、そこから先が弁護士の仕事

AIは確かに膨大な知識を持ち、論理的に正しい解答を瞬時に導き出してくれます。

しかし、一つの論点について完璧に法的な解答ができることは、いわば最低限の力です。

実際の法的紛争の場は、試験会場でも学び舎でもなければ、教科書通りの理屈だけで治められるほど単純でもありません。

完璧な法的解答をすれば完全勝訴が得られるかなど分からないのです。

仮に完全勝訴を得られても、たとえば、その頃に相手方が無一文になっていれば、判決は絵に描いた餅になります。

例としてお示しした、相手にどの情報を提示し、どの情報を伏せるべきかの判断をはじめとする数多の「戦術」。

そして、ご相談いただいた初期の段階で最終的な着地点を見据え、相手方の性格や社会的立場までも考慮して最適な解決ルートを描く「戦略」。

これらは、数多くの生きた事件を解決してきた弁護士の経験とノウハウがあってこそ生み出されるものです。

弁護士 おがわ

AIが提示する「間違いのない回答」は、あくまで解決に向けたスタートラインであり、一つの材料に過ぎません。

その材料をどう使いこなし、状況の変化に合わせて微調整を繰り返しながら、ご依頼者様にとっての「最善の結果」へと導くか。それこそが、我々弁護士の真の存在意義だと私は考えています。

溝の口テラス法律事務所では、AIを活用しながら、AIには決して代替できない「経験に裏打ちされた戦術と戦略」をもって、あなたにとってのベストな解決方法を一緒に考えます。法的なトラブルでお困りの方は、どうぞお一人で悩まずにお気軽にご相談ください。

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