婚姻費用の請求で注意すべき7つのこと|別居後の生活費で損をしないために弁護士が解説

弁護士 おがわ

こんにちは。武蔵小杉、たまプラーザ、二子玉川からほど近い溝の口テラス法律事務所の代表弁護士、小川です。

「別居したのに、夫が生活費を払ってくれない」
「婚姻費用は、いつから請求できるの?」
「算定表どおりの金額で合意してしまって大丈夫?」

別居後の生活費を支える婚姻費用は、ご自身と子供さんの生活を守るために非常に重要なお金です。

もっとも、婚姻費用は、別居すれば自動的に振り込まれるものではありません。

請求の時期や方法を誤ったり、算定表だけを見て安易に合意したりすると、本来受け取れたはずの金額を受け取れなくなることもあります。

そこで今回は、婚姻費用を請求するときに特に注意したいポイントを7つ取り上げて解説します。

目次

婚姻費用とは?別居中の夫婦と子供の生活費【請求は法律上の権利です】

婚姻費用とは、夫婦が婚姻生活を維持するために必要な一切の費用のことです。

実務上はほとんどの場合、別居した夫婦の間で、その支払義務の有無や支払金額が問題になります。

別居中の夫婦に収入差があれば、多くの場合は収入の多い側が少ない側に婚姻費用を支払うことになります。

なお、相手より収入が多くても、子供さんを監護している場合は、婚姻費用を請求できることも多いです。
婚姻費用には、食費や住居費、光熱費だけでなく、医療費、公立学校の教育費なども含まれます。

時々、「勝手に出てきてしまったから」とか「子供が会いたくないと言っており親子交流(面会交流)ができていないから」などと気にされて、婚姻費用の請求をためらわれる方がおられます。

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このようなお気持ちになるのは優しい方だからなのだと思います。

しかし、民法760条は「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。」と定めています。

婚姻費用分担請求権は、法律上の権利なのですから、請求をためらう必要はないのです。

注意点1|別居したら、婚姻費用はできるだけ早く請求する

婚姻費用で最も注意したいのが、請求の時期です。

実務上、婚姻費用は、原則として、相手方に請求した時点以降の分が認められます。

たとえば別居から数か月たって請求した場合、請求していなかった期間の婚姻費用までさかのぼって受け取れるとは限りません。

そのため、別居後は、早めに請求の意思を明確にしましょう。

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この請求時期の問題はとても大事ですので忘れないでください。
実際に別居後数か月してからご相談をいただき、当然に過去の婚姻費用を支払ってもらえるわけではないことを知って、後悔されるご相談者様もおられます。

注意点2|内容証明郵便や調停など、記録に残る方法で請求する

婚姻費用の請求を口頭ですると、後になって「請求されていない」などと争われかねません。

内容証明郵便を送る、婚姻費用分担調停を申し立てるなど、請求したことを後になって証明できる方法で請求することが大切です。

別居後は、それまで気前のいいことを言っていた相手が豹変することも多いのです。

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相手が不誠実な態度に変わってしまうことも想定して、「言った言わない」にならないように対策しなくてはいけません。

注意点3|算定表は「手取り額」ではなく、収入資料をもとに確認する

家庭裁判所では、ご夫婦の収入から婚姻費用の目安を把握できる婚姻費用算定表が広く利用されています。

ここで注意したいのは、毎月の手取り額だけを見て金額を決めないことです。

給与所得者であれば源泉徴収票や給与明細、副業をしていたり自営業者であれば確定申告書などの収入資料を確認し、賞与を含む年間の収入を把握する必要があります。

転職・休職・退職などで直近の収入が変わっている場合

転職、休職、退職、独立などによって直近の収入が大きく変わっている場合には、前年の収入資料だけでは実態を正しく反映しないこともあります。

たとえば、最近転職をしたという場合、転職をしてから現在までの給与明細を提出してもらうとか、転職後の会社から年収見込みの証明書を出してもらって、転職後の収入を明らかにしていく必要があるのです。

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この他にも、たとえばモラハラ夫が、給与以外に株の配当や家賃収入があるのにこれを隠して、しれっと源泉徴収票だけ出してきた例もありました。

相手の出してきた資料を信じてしまわず、その資料をもとに婚姻費用を計算して良いのかじっくり考えましょう。

相手が自営業者の場合、確定申告書の所得をそのまま使わない

自営業者の確定申告上の所得は、税法上の経費が差し引かれています。

しかし、税法上の経費が、そのまま婚姻費用の計算でも全て控除されるわけではありません。

たとえば青色申告特別控除等の実際には支出されていない費用は、加算したうえで算定表に当てはめる必要があるのです。

相手方が自営業者である場合には、収入の実態を丁寧に確認することが重要です。

注意点4|算定表の金額だけで簡単に合意してしまわない

算定表は、標準的な婚姻費用を簡易に算定できるとても便利な資料です。

しかし、算定表の婚姻費用は、夫婦の収入と子供さんのご年齢や人数から算出した、いわば基本の額です。

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「算定表では月額○万円だから、それで終わり」と決める前に、特別な支出を洗い出しましょう。

私立学校の学費や塾・習い事の費用は、算定表とは別に請求できることがある

たとえば、子供さんが私立学校に通っている場合や、同居中から続けている塾や習い事がある場合などには、算定表の金額とは別に、これらの費用の分担が認められる可能性があるのです。

別居期間は数年になることもあります。

月数万円の塾や習い事などの費用も、離婚するまでに合計すると数十万円から百万円以上かかってしまうこともあります。

「これくらいなら」と思わず、裁判では通常どこまで請求できるのかを確認しましょう。

相手が住宅ローンを払っていても、その全額が差し引かれるわけではない

一方で、相手が、あなたの住んでいる住居の住宅ローンを払っているからといって、当然にその全額が婚姻費用から差し引かれるわけでもありません。

あなたの収入はいくらかなど、具体的な事情によって扱いが変わるのです。

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ここが一番損をしてしまいがちなところです。 特に相手方が多額の住宅ローンを支払っている場合、双方が、住宅ローンの分、婚姻費用が少なくなることに納得してしまいがちです。
しかし、実際は、住宅ローンの額よりかなり少ない額が、婚姻費用から差し引かれるに過ぎないことが多いのです。

どれだけ差し引かれるのが通常なのか、合意する前に確認しましょう。

注意点5|相手が既に負担している費用を整理しておく

別居後も、相手が家賃、光熱費、学費、携帯電話代、保険料などを直接支払っていることがあります。

このような支払があると、相手から「既に十分な婚姻費用を負担している」と主張されたり、相手名義の家族カードや光熱費の引落しを突然止められたりすることがあります。

そこで、別居後に誰が何を支払っているか、分かるようにしておきましょう。

ただし、上述のように「住宅ローンを払っているから、その額を丸々婚姻費用から差し引く」といった一方的な主張を、そのまま受け入れる必要はありません。

相手が直接払いしている費用が、支払済みの婚姻費用といえるかは、一つ一つ丁寧に検討する必要があるのです。

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この支払済み婚姻費用の精算の問題は、精密にしようと思うととても大変です。

もし、別居後の生活に支障がないなら、相手のカードの利用などはしない方が、後々の面倒な精算がなくなって良いかもしれません。

注意点6|婚姻費用と親子交流・離婚を交換条件にしない

相手から、

「子供に会わせないなら婚姻費用は払わない」
「離婚に応じるなら婚姻費用を払う」

などと言われることがあります。

しかし、婚姻費用、親子交流、離婚は、それぞれ別の問題です。

婚姻費用は、あなたと子供さんの生活を維持するための費用です。

もちろん親子交流はできることが望ましいにせよ、相手が子供さんに会えているかどうかで支払義務がなくなるものではありません。

離婚を受け入れないと払ってもらえないものでも勿論なく、むしろ別居しようが夫婦であるからこそ支払う必要があるものなのです。

生活が苦しいと、早く支払ってもらうために不利な条件を受け入れたくなるかもしれません。

しかし、一度合意すると、その内容を後から変更できるとは限りません。

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離婚事件では、本来は交換条件にするべきでない事項を『それとこれとは別!』ときちんと分けて検討することがとても大切です。

注意点7|支払条件を明確にして、公正証書や調停調書で書面化する

話合いがまとまった場合には、少なくとも、次の事項を明確にしましょう。

  • 月額
  • 支払開始月
  • 毎月の支払日
  • 振込先
  • 未払額とその支払方法
  • 私立学校の学費や医療費など、特別費用の分担方法

「毎月できる範囲で払う」「学費はその都度相談する」といった曖昧な合意では、再び争いになる可能性があるのです。

また、せっかく婚姻費用が決まっても、単なる口約束では、知らぬ存ぜぬで態度を変えられたり、支払いが止まったときの対応が難しくなることがあります。

最低でも合意書を作成し、できるなら公正証書や、婚姻費用分担調停の調停調書など、強制的な取り立てが可能な形にしておくことが重要です。

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特にモラハラ離婚事件では、モラハラ配偶者が約束をひっくり返してくると想定して、文書で取り決めできるようにしましょう。

7つの注意点だけでは足りないケース|熟年離婚では「請求される側」になることも

ここまで7つの注意点を挙げてきましたが、婚姻費用請求の際の注意点は、これらに限られるものではなく、ケースによって多岐にわたります。

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たとえば、特に熟年離婚の場合、相手の定年退職による収入の減少が思いのほか大きいことがあります。

婚姻費用を請求できると思っていたら、こちらの方が収入が多かったがため、実は請求される側だったということがあるのです。

また、子供さんを連れて別居した場合でも、相手の収入がとても低く、かえってこちらが請求をされる側だったということもあります。

婚姻費用には、このような悩ましい問題が他にもあるのです。

収入の評価、住宅ローン、私立学校や習い事の費用、既払金、有責性などが問題になると、適正額の判断は簡単ではありません。

婚姻費用は、離婚事件の中でも特に難しい争点がたくさんある分野だというのが私の実感です。

まとめ|婚姻費用は「早く、正確に、証拠を残して」請求する

今回は、婚姻費用を請求するときに特に注意すべき7つのポイントを解説しました。

特に重要なのは、別居後できるだけ早く、記録に残る方法で請求することです。

そのうえで、双方の収入資料を確認し、算定表では考慮されない教育費、医療費、住居費などを整理しなければなりません。

婚姻費用は、別居後の生活を支え、離婚について落ち着いて考えるための土台となるものです。

早く決めたいからと不利な内容で合意してしまう前に、離婚事件に注力している弁護士へ相談することをおすすめします。

この記事が、別居後の生活費に不安を抱えておられる方の参考になれば幸いです。

溝の口テラス法律事務所は、いつでもあなたからのご相談をお待ちしております。お気軽にご相談ください。

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