離婚訴訟の尋問とは?流れ・実際の影響と弁護士が感じる「女性の強さ」

弁護士 おがわ

こんにちは。武蔵小杉、たまプラーザ、二子玉川からほど近い溝の口テラス法律事務所の代表弁護士、小川です。

今回は、離婚訴訟の「尋問」について書いてみたいと思います。

「裁判になったら、夫の前で証言しなければいけないのですか」
「尋問と聞いただけで、怖くて夜眠れません」

離婚訴訟をお考えの方、あるいは今まさに訴訟中の方から、こうしたお声をいただくことがあります。

ドラマの裁判では、尋問というと正にクライマックスです。

証人が法廷に立ち、弁護士が鋭い質問を浴びせ、ここにきて思わぬ事実が明らかになって、最後に裁判の流れが大きく変わる。

ドラマでは、そんな場面をよく見ます。

しかし、実際の裁判はどうなのでしょうか。

そして、これは完全に私の経験上の印象ですが、離婚訴訟の尋問を何度もやっていると、

「女性は強いなあ」

と思うことがあります。

今回は、そんな離婚訴訟の尋問について、少し本音を交えながら書いてみたいと思います。

目次

離婚訴訟の尋問とは?主尋問・反対尋問・補充尋問の流れ

裁判では、双方が自分の主張を記した準備書面や、LINE、メール、写真、録音、契約書など様々な証拠を提出して進んでいきます。

そして、これらを概ね終えた後、必要があれば、当事者本人や第三者から直接話を聞くことになります。

これが「尋問」です。

尋問は、多くの場合、次の順番で進みます。

  • 主尋問:まず自分の弁護士が質問する
  • 反対尋問:その後、相手方の弁護士が質問してくる
  • 補充尋問:最後に裁判官が補足的に質問して終わる

主尋問では、基本的にはこちらが裁判官に伝えたい事実を、質問形式でご本人の口から説明してもらいます。

一方、反対尋問では、相手方弁護士がこちらの供述の矛盾や弱いところを突いてきます。

弁護士 おがわ

ご当事者からすれば、離婚訴訟にまで至っている配偶者がいる法廷で、その代理人弁護士から一番嫌な部分について質問されるわけですから、相当な緊張を伴う手続きです。

尋問で裁判の結論は変わらない!?

尋問というと、裁判の結論を決める山場のように思われるかもしれません。

しかし、私の経験では、尋問によって裁判の結論が大きく変わることはそれほど多くありません。

まずはその理由から、そして「それでも尋問には意味がある」という話を順にお話しします。

尋問は「セレモニー」?結論が大きく変わることは少ない

私は弁護士になったばかりの頃、
「尋問はセレモニーみたいなもんで、結論が大きく変わることはそんなにない。」
と教わりました。

弁護士 おがわ

そして、現在、私自身も基本的にはそう思っています。

なぜなら、尋問が行われる頃には、既に双方がかなりの量の準備書面と証拠を提出しているからです。

裁判官は、それらを何か月もかけて読んでいます。

つまり、尋問の日になって初めて事件の内容を知るわけではもちろんなく、あと残すところは尋問でしか聞けない部分だけという状態で尋問に臨むわけです。

しかも主尋問で本人が話すことの多くは、それまで準備書面や陳述書(ご本人の言い分を文章にまとめて提出する書面)で既に主張してきたことです。

つまり、尋問には「既に書面に書いてあることを、最後に本人が口で説明する」という面があります。

そう考えると、尋問をした途端に、それまで劣勢だった事件が180度ひっくり返る、というドラマのような展開がそうないのは自然なことでしょう。

それでも尋問で事件の見え方が変わることはある

もっとも、「では尋問には意味がないのか」というと、もちろんそうではありません。

例えば、「楽しく食事をしていたはずなのに、突然、夫が妻の胸ぐらを掴んで怒鳴りつけた」という事実が主張されていたとします。

文章で書けば数行の話です。

しかし、ご本人の口から、どんな場面だったのか、何を言われたのか、どの程度の声量だったのか、その時子どもはどうしていたのか、その後どうなったのかという話を直に聞くと、その出来事が今までよりリアルに見えてくることがあります。

もちろん裁判官は印象で判決を書くわけではありません。

しかし、人が事実を評価する以上、本人の説明を直接聞いたことで、その評価が影響を受けることはもちろんあり得るはずです。

弁護士 おがわ

私の感覚としては「尋問だけで裁判の向きが180度変わることは少ないが、最後の数度を動かすことはある。」というイメージです。

そうすると、敗訴確実の事件が、尋問によって勝訴に変わる大逆転劇はなくとも、たとえば、結論がどちらに転ぶか分からないという微妙な事件の場合、その数度の動きで勝敗が変わるということは、あり得るのだと思います。

私自身、これはどちらに旗が上がってもおかしくないという非常に難しい事件で、尋問前、裁判官がこちらの敗訴を匂わせるかのような訴訟指揮(裁判の進め方に関する裁判官の判断や指示)をしたのに、その後尋問を経た判決でこちらが勝訴したことがありました。

当時、私のご依頼者様であった奥様は、尋問に向けた作戦会議に本当に真剣に取り組んでくださり、実際の尋問でも奥様が堂々と対応された一方、相手方は不誠実な回答に終始しました。

その結果、尋問前わずかに相手方に向いていた針が数度ずれて結果が変わったのではないかと私は思っています。

それでも私は、できれば尋問をやりたくない

ここからは少し本音です。

弁護士 おがわ

私は、できれば尋問はやりたくありません。

もちろん、必要であればやります。そして、やる以上は、それこそ絶対に勝つつもりで徹底的に準備します。

しかし、「ぜひ尋問をやりましょう!」とはあまり思わないのです。

尋問の準備はご依頼者様の大きな負担になる

その理由の一つは、ご依頼者様のご負担がとても大きいからです。

尋問をするとなれば、それまでに提出された書面や証拠をもう一度最初から整理します。

  • 何を聞くのか
  • どの順番で聞くのか
  • どの証拠をどの場面で提示するのか
  • 相手方から何を聞かれるのか
  • その質問にご本人はどう答えるべきか

勝つために相当細かく考えます。

そうすると、事実のディテールをさらに精密にしていく過程で、ご依頼者様との打合せも必要なうえ、苦しいこと辛かったことをより鮮明に思い出していただかなければいけないこともあります。

たとえば、モラハラ離婚で、一番辛かった出来事は何か、それはいつあったことか、その出来事が起こった原因がご自身に無いとなぜ言えるか……

弁護士 おがわ

こんなことを話し合えば、せっかく別居をされ辛かった思い出から離れられ始めたご依頼者様の大きな負担になるに決まっています。

そして、それだけ準備をしても、先ほど書いたように、尋問によって結論が劇的に変わることはそれほど多くありません。

ご依頼者様が無意味に辛い思いや苦しい思いをするくらいなら、尋問をせずに終わった方が良いと思っています。

離婚訴訟の尋問では夫婦の対立がさらに深くなる

そして、離婚事件にはもう一つ問題があります。

尋問をすると、ご夫婦の対立構造が非常にはっきりします。

それまで準備書面という紙の上で争っていたことを、法廷で対峙し真正面からぶつけ合うのですから、当然と言えるでしょう。

離婚した後も、子どもさんがいれば二人は父親と母親です。

そう考えると、尋問によって、ご夫婦の間の溝をさらに深く掘り返す意味があるかを都度考えなければいけない、と私は思っています。

尋問をやりたがる男性、嫌がる女性。しかし始まると……

ここからは、かなり私の偏見が入ります。
もちろん、全ての男性がそうだという話ではありません。

ただ、これまでの経験では、尋問をやりたがるのは男性の方が多いように感じます。

女性のご依頼者様は「尋問なんか嫌です」、「夫と会うのが怖いです」、「緊張して何も言えなくなりそうです」というような自信のないことを言われることが多いように感じます。

ところが、実際に尋問が始まると、なぜか女性の方が、肝が据わっていることがあるのです。

いざ尋問が始まると女性は強い【反対尋問の実例】

では、「女性が尋問で強い」とは具体的にはどのように強いのでしょうか。

一つ、例を挙げてみます。

たとえば、同居中のある時点で夫婦仲がどうだったのかが問題になっているとします。

こちらとしては、「その時点では、夫婦仲は特に悪化していなかった」と主張したい。

ところが、その頃、こちら側から相手に、「もう離婚する」、「親権は自分がもらう」という内容のメールを送っていたとします。

一見すると、こちらに不利な証拠です。

もっとも、このご夫婦の間では、以前から喧嘩になると同じような言い合いをし、その後仲直りすることが繰り返されていたとします。

このメールについて質問をされた時、こちら側が男性だと、例えばこんなやり取りになってしまうことがあります。

相手方弁護士:「あなたは、この時、『これでもう離婚だな。親権は俺がもらうから』というメールを送っていますよね?」

旦那さん:「はい……。でも、これまでもこういうことはありましたので、本気ではありませんでした。」

相手方弁護士:「『本気ではない』と奥様には伝えたのですか?」

旦那さん:「それは伝えてはいませんが……」

相手方弁護士:「これまでも、こういうやり取りがあったとのことですが、何回くらいあったのですか?」

旦那さん:「それはもう沢山ありましたけど……。でも、その後は仲直りできていましたし……」

相手方弁護士:「これ以前にも離婚の話になることが沢山あったということですね。それでは次の質問です。」

これでは、少し危険です。

本人としては、「今回も本気で離婚するつもりではなかった」と説明しているつもりです。

しかし裁判官から見ると、「以前から何度も離婚話があった」、「今回も『もう終わりだ』とメールを送った」という事実が強調されかねません。

その結果、「このメール以前から何度も離婚の話があり、この頃には既に夫婦関係が相当悪化していたのではないか」と評価されてしまう危険性があります。

本人は嘘をついているわけではありません。質問にも真面目に答えています。

しかし、一問一答を重ねているうちに、いつの間にか相手方弁護士が作りたいストーリーの中に入ってしまうのです。

ところが、回答者が女性の場合、同じ質問に対して、柔軟な答えが返ってくることがあります。

相手方弁護士:「あなたは、この時、『これでもう離婚ですね。親権は私がもらいます』というメールを送っていますよね?」

奥様:「はい。でも、これは夫に反省してもらうために言ったことです。これまでも夫は喧嘩をした時、離婚の話をほのめかすと謝罪してくることが何度もありました。この時も、こう言えば夫が謝罪してくれると思って送りました。」

相手方弁護士:「旦那さんに、『本当は離婚するつもりではない』と伝えたのですか?」

奥様:「伝えるはずないじゃないですか。伝えたら、反省してくれないですよね。」

相手方弁護士:「これまでも、こういうやり取りがあったのですね。何回くらいあったのですか?」

奥様:「付き合っている時から、『そんなこと言うなら別れる』と言って反省させることは普通にありました。そのあと、いつも夫が謝ってきて仲直りしていました。この時も同じです。」

弁護士 おがわ

相手方弁護士が見る見る弱っていくこのような場面を見ると、「いやあ、強いなあ」と思います。

奥様も「メールを送った」という不利な事実自体は認めています。

しかし、「そのメールが二人の関係の中で、どういう意味を持っていたのか」まで同時に説明してしまうのです。

相手方弁護士は、「以前から離婚話が何度もあった」という事実を引き出して、「だから夫婦関係は以前から悪かった」という話に持っていきたい。

ところが、奥様に「付き合っている時から同じことをしていて、そのたびに仲直りしていた」と言われると、意味が変わってきます。

「婚姻関係が悪化してから始まった現象ではなく、この二人の交際時代から続くただの痴話喧嘩のパターンだった」という事実が浮き彫りになるからです。

女性の強さは「コミュニケーション能力」なのかもしれない

では、なぜこのような違いが生じるのでしょうか。

もちろん、これはあくまで科学者でもない私の経験からくる推測です。

ただ私は、一つの理由として、コミュニケーション能力の違いがあるのではないかと感じています。

相手が何を聞こうとしているのか、なぜ今この質問をしているのか、自分がこのまま答えると聞いている人にはどのように伝わるのか、誤解されそうなら何を補足すれば本当の意味が伝わるのか。そういうことを瞬間的に判断する能力、これが決定的に違うように思えます。

夫婦生活は、「文脈」の塊です。

しかし裁判では、その中のメール一通だけが切り取られて、「あなたはこう書いていますね?」等と質問されます。

その時に、その一通のメールを、元の夫婦関係の中に戻して説明できるか。

私は、女性の方が長けている場面をよく見ます。

もちろん、「男性は尋問に弱く、女性は尋問に強い」という法則があるわけではないと思います。

尋問が非常に上手な男性もいるでしょうし、緊張して何も答えられなくなってしまう女性もいるのでしょう。

今回書いたことは、あくまで私が数多くの離婚訴訟に携わってきた中で感じている個人的な印象です。

まとめ|離婚訴訟の尋問は準備がすべて。「尋問が怖い」と感じているあなたへ

尋問は、ただ質問に答えればよいというものではありません。

事件全体を踏まえて何を伝えるのか、相手方からどのような質問が予想されるのか、その質問がどのような意味を持つのかまで考えて準備する必要があります。

逆に言えば、回答の型を覚えることよりも、ご自身の事件の「勘所」を弁護士と一緒に理解して臨むことの方がずっと大切です。

「尋問なんか怖い」と今は思われていても、いざその場に立ったときのあなたは、ご自身が思っているよりずっとずっと強いかもしれません。

溝の口テラス法律事務所では、勤務時代から尋問なしでは終われないほど難しい離婚事件を多数解決してきた弁護士小川が、事件の内容を踏まえながら、ご依頼者様と一緒に最善の方針を考えていきます。

この記事が、離婚訴訟や尋問に不安を感じておられる方の参考になれば幸いです。

離婚問題でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

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